習近平の状況 70年前の蒋介石に似ている=米歴史学者

米国の歴史学者がこのほど、中国の現指導者、習近平国家主席を理解するには、過去の中国共産党指導者ではなく、蒋介石と比較する必要があるとの見方を示した。米ロサンゼルス・タイムズが5月24日、この学者の寄稿文を載せた。

米セントジョセフ大学の歴史学教授、ジェームス・カーター氏とカリフォルニア大学アーバイン校の歴史学者、ジェフリー・ワッサーストロム氏によると、現代の研究者は、習近平論を展開する際に過去の共産党指導者らと比較しているが、習近平氏の立場と政治手腕は、70年前、中華民国を統一した蒋介石に近いという。

1955年、米タイム誌の表紙の人になった70歳近い蒋介石氏

 70年前と同じ反腐敗に挑む

両氏の見解によると、蒋介石がひきいた中国は1946年の第二次世界大戦後、戦勝国の1つとして、国連安全保障理事会の常任理事国入りした。アメリカの財政支援を得て、あたかも国際秩序を維持する大国の一員である立場にあった。

現在、中国は文化大革命の壊滅的な状態から回復し、世界的な影響力を持つ「スーパーパワー」を持つ国になるだろうと予想されている。しかし、70年前と同じように、「腐敗」は中国が真の大国になる道を阻む障害となっている。

習氏は名目上、中国共産党の主席という立場にあるが、今の中国では「共産主義」は既に有名無実化しており、「消費主義」が幅を利かせている。

中国の未来を展望する際、習氏が直面している課題は、例えば、巨額の不正蓄財をする腐敗問題、70年前の蒋介石の立場に非常によく似ていることを見逃せないという。

1946年の『中国週間評論』では、汚職の横行によって腐敗官僚の話題はありふれたものとなり、記事のネタにもならなくなったと報じられている。蒋介石が反腐敗運動を起こした時、彼は奇しくも今の習氏と同じように、親戚関係にあった孔祥熙と宋子文が投機に従事して個人資産を貯めこんでいるという醜聞に巻き込まれていた。

当時の評論家は、蒋介石の反腐敗運動の真意が、乱れた秩序を回復しようとしたのか、それとも敵対勢力を潰そうとしたのかと疑問を投げかけていた。

今の習氏の立場も同様で、習氏自身は断固として腐敗を撲滅する姿勢を崩していないが、パナマ文書の流出によって姉の夫がオフショア会社を設立していたことが明るみに出たことが、これまで行ってきた腐敗撲滅運動に水を差す結果となっている。メディアは、習氏が権力を強化したいのか、それとも現体制を改革したいのか、あるいはその両方なのかと、なかなかその真意を掴めなく首を傾げている。

 伝統文化を重んじる共通性

もう一つの共通点は、二人とも孔子思想を高く評価し、本当の強い中国を作るため、伝統文化を重んじ先人の知恵で国民の素質を高めることが欠かせないと主張していることである。

カーター氏とワッサーストロム氏は、習氏が蒋介石のように、敗北して台湾に追いやられるわけではないと強調。経済成長の減速と環境問題の悪化で、一党支配を否定する人が多数となることが予想される現代中国で、習氏は、最も重要な指導者だと語っている。

(翻訳編集・桜井信一/単馨)

関連記事
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]
上川陽子外務大臣は、パナマ在留邦人及び進出日系企業関係者と昼食会を実施した。日・パナマ間の経済分野における協力の可能性や課題、教育などについて、意見交換を行った。