雪のない山、半干ばつ地区…どうやって北京で冬季五輪を開催するのか IOCが心配
国際オリンピック委員会(IOC)は31日、2022年冬季オリンピック開催地を中国・北京に決定した。しかし、IOCは競技会場に「雪がない」ことを心配している。
大気汚染や人権問題など、北京開催に懸念されている複数の問題のうち、IOCが最も心配しているのは、冬季大会にもかかわらず「雪がない」ことだ。会場予定地の延慶の平均積雪量はわずか5センチで、最少積雪記録は1センチ。1998年以後、降水量は減少の一途をたどり、昨年の年間降水量400~500ミリで「半干ばつ地区」となっている。
北京冬季五輪では、フィギュアスケートやカーリングなど氷上競技を北京市中心部で、アルペンやボブスレーなど雪上競技は市中心から90キロ離れた延慶と160キロ離れた張家口で開かれる予定だ。
中国のオリンピック申請委員会は競技場に近い雲州ダムから水を引き、人工雪を造って不足分に充当する計画だが、国営メディア・新華網でさえも数年前、人工雪は水資源の浪費であり、干ばつをさらに深刻化させると指摘している。また、パラリンピック開催時期にはすでに春季に入り、気候が温暖になるため、競技環境は劣化することが見込まれている。
衛星放送・新唐人テレビが伝える、中国スキー協会が北京のスキー場調査データによると、人工雪に使われる地下水の回収率は40%程度で、地域の干ばつ問題が深刻化するという。また、人工造雪は植生に対しても影響をもたらすと、生態専門家は指摘している。
「張家口と延慶地帯は、年間降雪量が少なく、大会の開催には完全に人工雪に頼ることになる」とIOCは6月の評価報告書で指摘した。当局はその土地に馴染まない人工雪の質の悪さは、競技者に影響を与える可能性がある。また、「天然の雪の不足は、会場の景観としても美しくないだろう」とIOCは同書に加えている。
中国の環境活動家は、人工雪の問題は北京冬季オリンピック開催だけに留まらないと心配している。北京のオリンピック申請委員会は「持続発展が可能な冬季五輪」を掲げ、大会終了後も雪上競技の練習場、一般スキー客への開放を計画しているという。つまり、毎年人工雪を降らせることになる。
環境保護活動家・張峻峰さんは新唐人テレビの取材に対し、「現地の水資源の量では、(雪上競技)産業の運営と発展を支えるのは無理だ。長期的に見れば、生態環境に大きな影響を及ぼす」と懸念を示した。
2022年冬季五輪招致レースは、北京とアルマトイ(カザフスタン)の一騎打ちが早くから判明していた。北米や欧州の候補地、例えばオスロやストックホルム、ミュンヘン、クラクフ(ポーランド)は経済的な理由や国民の支持が得られなかったにより、昨年候補から降りた。
「IOCにとって同オリンピックの開催地レースは残念なものだったに違いない。なぜなら、民主主義的な政治国が次々と招致レースから離脱したからだ」と、ニュースサイト、ビジネスインサイダーのスポーツ編集者トニー・マンフレッド氏は伝えている。
中国当局にとって2008年夏季大会同様、世界的な存在感を示すという政治的意味で五輪開催は大きな価値がある。史上初の夏冬同都市開催という名誉もある。そのため、環境が犠牲になっても、IOCも評価書で認める「北京の安定した財政力」で補って開催させたい意向だ。習近平国家主席は31日、IOC会長に感謝の意を示すメッセージを送った。
北京冬季オリンピックの開催期間は、旧正月を含む22年2月4日~20日に予定されているが、冬季の北京では石炭暖房により深刻化する大気汚染も、選手の体調へ影響を与えかねない。パラリンピックは3月4日~13日で春季に差し掛かり、干ばつと、温暖な気候が懸念されている。
(翻訳編集・佐渡 道世)