国境地帯に新監視システム 少数民族の国外脱出防ぐためか

多くの国が他国からの難民流入を阻止しようとしているのと対照的に、中国政府は自国民の国外脱出を厳しく取り締まっている。近ごろでは、国境地帯で新たな監視システムまで導入し、国内のチベット族やウイグル族といった少数民族の越境を厳しく取り締まろうとしている。

中国政府系メディアの報道によると、この新システムは最新のレーダーと無人機で越境者を追跡するもので、情報はリアルタイムに自動的に国境警備隊に送られる。悪天候下でも24時間体制で作動する。

中国政府は、このシステム導入の主な目的は、麻薬の密輸や非合法的な越境を防ぐためだと説明している。現在は新疆ウイグル自治区、雲南省、チベット自治区等の国境地帯に配備済だという。

ロンドンに本部を置くチベット人権団体「フリーチベット」のスポークスマンのアリステア・カレー氏によると、中国政府の支配下から逃れるために、山岳地帯を越えてネパールに逃げ込むチベット人が多くいる。国境越え自体が危険を伴ううえ、さらにこの新監視システムが導入されたことで、国外脱出がますます難しくなったという。

また、中国国境警備隊が脱出を図るチベット人を射殺する事件が頻繁に起きており、女性や子供の犠牲者も出ている。2006年、中国とネパールの国境、ヒマラヤのナンパラ峠でネパールへ逃れようとしているチベット人約30人の行列に、中国兵士が発砲する様子を撮影した映像が公開された。この時、少なくとも2人が死亡した。

前出のカレー氏は、ここ数年でチベット人の中国脱出がかなり難しくなり、越境難民の数は大幅に減少した。以前は毎年数千人規模だったのが数百人にまで減り、現在ではわずか数十人しかないだろうと話す。

カレー氏は、この新監視システムは国境周辺地域の住民をも見張っている可能性が高いとみている。

(翻訳・桜井信一、編集・叶子)

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