中国政治分析

中国 6中全会コミュニケから予想される4つの政治動向

中国共産党の第18期中央委員会第6回全体会議(6中全会)は10月27日に4日間の日程を経て閉幕した。同会議では、中国共産党は党内の風紀粛正をめぐる『新情勢下の党内政治生活に関する若干の準則』(以下は『準則』)の制定と『党内監督条例』(以下は『条例』)の改正を行った。また閉幕後に発表された会議を総括する6千字あまりのコミュニケでは、「習近平同志を核心とする党中央」と2回も明記され、党内において習氏が絶対的かつ最高な権力を有するのが確実となった。6中全会後、共産党内に以下4つの動向が予測される。

 「習核心」で権力集中強化と「江核心」の終焉

今回の6中全会は習近平氏が執政して以来の重要な会議であり、または江沢民派閥との権力闘争においても重要な意味を持つ会議である。党内の汚職摘発に関する『準則』と『条例』は、習氏に「党核心」としての最高権威を与えただけではなく、対立する江派閥人員の一掃に権力基盤をも固めた。

今年の初めから一部省政府のトップが「習近平氏を党の核心に」と呼び掛けてきたが、「習核心」の確立までに10か月間もかかった。これによって党内派閥間の闘争において習氏が優勢になったことが示唆された。

鄧小平氏によって指定された江沢民時代の「江核心」と違い、激しい権力闘争の末に勝ち取った「習核心」はより重みがあることは言うまでもない。「習核心」の確立は、「江核心」の終焉を意味しており、また、江派閥の現任政治局常務委員の張徳江氏、劉雲山氏と張高麗氏の権力地位が後退することも意味している。一方、もし習氏が現在の最高権力機構の常務委員制度を廃止し、大統領制度に変更する意向があれば、「習核心」の確立は、その重要な一環になるのは間違いないだろう。

 習氏が来年19大の最高指導部人事決定権を掌握

中国共産党の歴史を見ると、毛沢東氏や鄧小平氏が「指導の核心」として、個人的権威で中国共産党最高指導部の人事および政治運営に最終的な決定権を持っていた。江沢民も策略や陰謀を弄して、最高指導部人事決定権を握り、胡錦涛氏と温家宝氏に実権を渡さなかった。

「習核心」の確立で、習氏の党内における政治と軍事の実権の掌握が確実となった。習氏は、来年開催の共産党第19回全国大会(19大)において、最高指導部の人事交代や新たな人事の選出についてより強い発言権を持ち、さらに最終的決定権を持つことになる。

同コミュニケでは、「正しく人事を選定し正しく人を使うことは、党内政治生活を正常化する保障だ」「幹部、特に高級幹部を考察するには、まず党中央の基本路線を徹底的に実行しているかどうかを見なければならない」などを明示し、習氏の思想方針に一致しない幹部が19大の最高指導部に入ることができないと示唆した。

 

 暗黙のルールを廃止し、現任の政治局常務委員も懲罰の対象に

同コミュニケでは、『準則』の最重要対象は「党中央委員会、中央政治局、中央政治局常務委員会の幹部」だと強調した。また、『条例』の重点対象は党の管理機構と管理部門の主要な幹部だとした。

習政権は『準則』と『条例』で、中国共産党内に以前からあった「刑不上常委」(中央政治局常務委員が在任中、または退任後に刑法による懲罰を受けない特権があること)という暗黙のルールを廃棄することになった。また、同コミュニケでは「管理部門の幹部は思想上、または行動上において、党中央の方針と一致を保たなければならない」「仕事上の重大問題及び個人に関する相関事項について、規定に則って上層部に報告しなければならない」と示し、対立する江派閥の現任政治局常務委員の懲罰を念頭にけん制した。

 「虎王」の江沢民を告発へ

同コミュニケでは、反腐敗運動の主要対象は「虎王」の江沢民と曽慶紅などだと再三示唆した。「紀律順守には特権が許されず、紀律執行に例外は存在しない」「紀律の拘束を受けない特別な組織と特別の党員の存在を絶対に許さない」「党内監督に関しても、立ち入り禁止区域はなければ例外も許さない」「党内に腐敗分子の隠れ場所の存在を絶対に許さない」「腐敗分子を必ず粛清する」などと強い口調で示した。

また同コミュニケは党内に対して、いかなる組織といかなる党員が紀律違反、法律違反の事実がある場合、それを実名で告発するようと推奨し、告発された幹部が当局の調査に干渉し介入してはいけないと定めた。習派閥が、今後江派閥高官と江沢民自身を対象に大規模な告発運動を起こすことを示唆した

今回の6中全会では、習近平氏は「党核心」としての位置づけに成功し、また将来江沢民らの一掃を阻む党内体制上の障害を取り除くことに成功した。6中全会後、19大の最高指導部人事選出と伴い、江沢民らの逮捕をめぐって決定的な局面を迎える可能性がある。そして今後、中国の政治体制と経済体制も大きな変化を迎えることになるだろう。

(時事評論員・謝天奇、翻訳編集・張哲)

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