夕暮れ時の北京天安門広場(Getty Images)
ハエもトラも叩く

反腐敗ドキュメンタリー番組、習政権の「強い警告」伝える

中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議(6中会議)の開催直前に放送された、反腐敗運動を題材にしたドキュメンタリー番組が、中国国内の世論を賑わせた。このなかで、失脚した政府高官らの汚職の実態が明らかにされたうえ、習近平総書記の党中央に抵抗する高官らの行動が詳しく伝えられたためだ。

中紀委宣伝部と中央電視台が共同制作した、習政権による反腐敗運動について伝えるドキュメンタリー番組『永遠在路上』は全8回で、10月17日から25日まで同局のゴールデンタイムに放送された。

 ドキュメンタリー番組通じて 反腐敗へ強い警告

番組は、習主席の腐敗に対する強い警告が込められていることが読み取れる。中紀委によると、製作チームは国内22省(区、市)を回って40もの典型的な汚職の事例を撮影し、また国内外の研究者、中央規律検査委員会の幹部ら計70人以上を取材したと公式ページで明かした。さらに、失脚した省部級以上の元官僚の証言を伝え、いくつかの典型的な汚職事例も挙げた。

第一回目の放送では、失脚した元高級官僚の郭伯雄、徐才厚、蘇栄らが調査を受けた時の様子が再現された。また、高級官僚の収監を専門的に行っている、公安部秦城監獄の内部の様子も、初めて公開された。

この番組の制作チームは中紀委から選出され、番組の最後には「総計画者:钟纪轩」と表記されていた。「钟纪轩」と「中紀宣」は漢字違いで発音が同じであるため、一般に「中紀委宣伝部」を指していると認識されている。

第十八回全国代表大会以来、反腐敗運動の推進は習政権にとって最重要課題となった。この反腐敗運動に呼応するため、中紀委内部でも一連の改革が実施された。13年9月、中紀委監察部はウェブサイトを開設し、14年には宣伝部を組織した。15年1月には、このウェブサイトをリニューアルして一般ユーザーがオンライン利用することも可能にしたほか、6月には携帯端末のユーザーがオンラインで通報窓口を利用することもできるようにした。

その結果、中国共産党の汚職官僚の取り調べの情報は、今や従来の党メディアや党の新聞といった宣伝部に属する官製メディアが主体に行うのではなく、中紀委の公式サイトがリアルタイムな情報を先行して発表するようになった。

中紀委公式サイトの発表によると、13年から16年9月までに中央規律検査委員会監察機関が立件した汚職事件は101万8000件にのぼり、すでに101万人が党紀・政紀処分を受けている。捜査範囲は31省区市まで広がり、そこには中央機関や国営企業、金融機関も含まれていると報じられている。

(翻訳編集・島津彰浩)

関連記事
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]
上川陽子外務大臣は、パナマ在留邦人及び進出日系企業関係者と昼食会を実施した。日・パナマ間の経済分野における協力の可能性や課題、教育などについて、意見交換を行った。