世界結核デー 

薬剤耐性結核新薬の低い普及率を懸念=国境なき医師団

3月24日の世界結核デー。国境なき医師団(MSF)は、効果の高い結核の新薬の普及が進んでいないことを指摘し、患者の治療の選択肢を増やすことが急務だと警鐘をならした。

結核は、死亡者の最も多い感染症の1つで、毎年180万人の人びとが命を落としている。MSFによると、半世紀ぶりに誕生した2つの新薬の使用率は、条件付きで薬事承認されてから3年経つにもかかわらず、対象患者の5%に満たないという。

薬事登録が進んでいないこと、高価格であることがその理由にある。2つの新薬とは、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「ベダキリン」と、大塚製薬の「デラマニド」。

これらの新薬の効果が見込める結核患者は年間15万人いるが、実際に治療を受けたのはそのうちの5%未満だ。WHOは新薬普及を促すため、重症患者に2つの新薬を使用するように勧めるガイドラインを出している。

世界保健機関が発表した『世界結核報告書』2016年版では、薬剤耐性結核(DR-TB)患者の2015年の新規症例が世界で58万件、多剤耐性結核(MDR-TB)の死亡例が約19万件と推計。報告書では、東南アジア地域と西太平洋地域に、同年にMDR-TBと診断された症例の約40%が集中していると指摘する。

新薬の普及には、結核のまん延する国を中心に多くの地域での薬事登録と、医薬品特許プールとの自発的ライセンス許諾契約を結ぶための交渉が必要だ。

 現在、結核の高まん延国とみなされている30カ国の中で、デラマニドが薬事登録されている国はない。世界抗結核薬基金を通じて大塚製薬が設定した販売価格は6カ月分で1700ドル(約18万9700円)。デラマニドは既存薬との併用も必要とされるため、患者の負担は大きい。

MSFは、新薬を発売した2社が「幅広い地域で患者が利用し続けられるように価格の適正化と提供機会の拡大を図り、新薬の普及を進めていくことが急務」と強調する。

(編集・甲斐 天海)

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