文化大革命中 広西省で集団人食い=中国政治学者

1990年代に米国に移住した中国政治学者の宋永毅氏(68)は、1960~70年代の文化大革命中に「アウシュビッツ収容所での集団虐殺よりもっと残酷な集団人食い」が起きたと告発している。その著書「広西文革機密档案資料」(電子ブック、在米中国系出版社・明鏡出版社2016年出版)は、独自入手した中国当局の機密資料や各方面の調査結果として詳述した。

人食いが起きたのは「文化大革命」時代の広西省と、大飢饉時代の安徽省。

広西省での集団人食い

故・毛沢東氏が自分の権力を強化するため、1966~76年に政敵や文化人などを粛清する全国規模の文化大革命を起こした。

1980年代はじめ、党内開明派とされる当時の故・胡耀邦総書記、故・習仲勲中央書記処書記(習近平国家主席の父)は、広西省での文化大革命中の迫害実態を調べるため、現地の幹部約10万人を動員して5年間調査を行った。調査結果を収めた内部の機密資料は、「非正常な死」を遂げた人の数は約8.6万~15万人、人食いされた被害者は名前が分かるだけで302人に上ると記述していた。いっぽう、各方面の証言によれば、実際の被害者は遥かに多い。

北米に渡った中国人作家の鄭儀氏は1986年から2回広西省を訪れ、人食いの実態を現地調査した。1993年出版の自著「紅色記念碑」は、省内26の県・市で人食いを確認できたとして、これらの県・市の名称、一部被害者・加害者の名前、加害者の証言などを収録した。

当時の党中央調査チームのメンバー、晏楽斌氏はのちに文章で、同26の県・市以外の3つの県でも人食いが起きたと告発した。(当時の広西省には約86の県・市があった)

長年、この問題を追跡してきた現地の有識者は「県内75%の地区で人食いが起きた。規模はさらに大きい。名前のわかる被害者は421人に上る」と匿名で証言した。

被害者のほとんどは党の敵対分子とされる知識人や地主だった。公開処刑で内臓や肉が切り分けられ、傍観者・食人者の大半は一般市民。前出の鄭儀氏は「万人食人運動」だと形容した。

広西省で人食いが最も盛んだったのは武宣県。同県の県史にも記録があった。

1968年6月12日、10数人の「黒五類」(出身階級が悪い五種類の人物)を対象とする批判大会が行われた。「黒五類」は刃物で切り付けられながら、悪行の白状を強要された。まもなく一人が死亡、一人が意識不明となった。二人は会場から引きずり出された。その途中、一人は意識が戻り、命乞いをした。「五分間生き延びさせる」と返事され、五分後、空き地に着くと、腹部を切り開かれ、心臓や肝臓を取り出された。その後、すでに死亡した人も内臓を取り出された。傍観者の一人は突如、「こいつは牛を盗んだことがある」と言われた。弁解の余地なくそのまま殺され内臓が取り出された。彼らはかつての隣人や同僚だった。

同年6月18日、同県の中学校で生徒らは数名の教員を囲んで暴行した。まもなく呉樹芳という教員は死亡した。造反派のリーダーは「肝臓は体に良い」と言って、肝臓を取り出し、持ち帰った。肉も一部切り取って、生徒17人で調理して食べた。学校中、血痕だらけ、血のにおいが充満していた。

 当時、町中に血の付いた棍棒や石が散乱し、バラバラにされた遺体は随所に横たわっていた。すべては「革命」という名のもとで行われていた。共産主義は世界で計1億人の命を100年足らずで葬った。共産主義政権は丸腰の市民の血と白骨によって築き上げられたと言っても過言ではない。

大躍進時代に安徽省での人食い

1958~61年、当時の毛沢東国家主席の大躍進政策の失敗により全土で大飢饉が発生。もっとも貧困な地域・安徽省では400万人が餓死した。同省公安庁元副庁長・尹曙生氏の証言では、政権内部の極秘統計資料によると、省内では59~61年の3年間に1289人が食べられた。主な被害者は餓死した人、5~8%は飢餓の為瀕死状態の人だった。

「安徽省亳県地名録」(1984年8月出版)にこの歴史が書き残された。「城関公社のある村民は兄夫婦が餓死後、姪を育てることにした。姪も1960年の春に餓死したため、姪を食べた」「魏岡公社の馬という村民は父親を食べた後、残った肉を1斤15元で近隣住民に売った」「城父公社の韓という青年は1960年春、親が餓死した後、一緒に生活していた弟を殺し食べた」

宋永毅氏は1999年一時帰国の際に、「国家機密を違法に収集」などの罪で強制収容されたが、国際社会の圧力により半年後に釈放された。 

 (翻訳編集・叶清)

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