19大習近平氏の活動報告、2つの注目ポイント
習近平国家主席が18日に開幕した中国共産党大会で、党のトップの総書記として政治活動報告を行った。3時間半にわたって読み上げられた報告の内容は外交政策や経済政策、反腐敗運動、構造改革など多岐に渡った。時事評論員の石実氏は今回の報告に、おもに2つの注目ポイントがあるとした。
「社会矛盾」定義の変更
1つ目は、「社会の主要な矛盾」に関する定義。18日の演説で習近平氏は「人民の日増しに拡大する物質文明に対するニーズと、立ち遅れている社会生産との矛盾」という従来の言い方を「人民のよりよい暮らしに対するニーズと、不均衡かつ不十分な発展との矛盾」に変更した。石氏は、この変化によって今後の政策が大きく変化するとみている。
「鄧小平時代では、経済発展が最重要課題として取り組まれ、鄧小平氏は毛沢東の階級闘争政策を終結させた。さらに、『物質文明に対するニーズと立ち遅れた社会生産との矛盾』を説き、当局は改革開放の政策を実施した」。
「江沢民時代には『3つの代表』が掲げられた。官商癒着を奨励し、腐敗の横行によって各種の社会問題が勃発した」
習近平氏が「主要な矛盾」を再定義することによって、「経済成長を追求してきたやり方は大きく方向転換するだろう」と石氏が分析した。なぜなら「より良い暮らしに対するニーズ」は法治、環境汚染、治安など広範に及んでいる含まれているからだという。
しかし、習近平氏の願望が良くても、共産党による厳しい統制が続いている以上、「良い暮らしが手に入るわけはない」と石氏は言う。「中国共産党を解体しない限り、習氏の改革は党に阻まれて上手くいかない」
法治を強調、政法委を完全掌握へ
2つ目は、習近平氏が報告中に「中央全面依法治国領導小組(全面的に法によって治国する指導チーム)」の設置を言及し、今後「法治国家の建設は、中央当局が統一に指導していく」と表明した。
石実氏は、同チームの設立で習氏が中国公安・司法機関を管轄する「中央政法委員会(政法委)」を完全に掌握していくとの見解を示した。現在、政法委は江沢民派によって支配されている。
石氏は「習氏が国家主席に就任後、『中央国家安全委員会』を設置した。これによって、国家安全部門への支配を自分の下に収めた。しかし、検察・裁判所などの司法部門を動かすことができなかった」。
今回党大会後、最高人民法院(最高裁)トップの周強氏が離任する公算が高いとみられる。また、最高人民検察院トップの曹建明氏と、党中央政法委書記の孟建柱氏も定年退職を迎える。
「最高裁などの主要部門にいる江勢力の後退で、習氏は自らの側近を検察や裁判所など、政法委や他の司法部門の要職に就かせるに違いない」と石氏が推測。
江派のメンバーである呉愛英・司法部前部長は、今年2月に「厳重な規律違反」があったとして免職され、10月に党籍剥奪処分を受けた。
(翻訳編集・張哲)