サウジ、ワリード王子ら拘束 皇太子が権限強化

[リヤド 5日 ロイター] – サウジアラビアのサルマン国王の子息ムハンマド皇太子が率いる汚職対策委員会は、同国の富豪で著名投資家ワリード・ビンタラール王子ら11人の王子や現職閣僚4人のほか、元閣僚ら数十人を拘束した。3人の政府高官が5日、ロイターに明らかにした。

ワリード王子は投資会社キングダム・ホールディングを所有し、米金融大手シティグループや短文投稿サイトの米ツイッターに出資している。

汚職対策委は国家警備相を務めるムトイブ王子も拘束。同氏は職を解任された。

当局者1人によると、ワリード王子には資金洗浄、汚職、当局者への強要などの疑いが、ムトイブ王子には横領、架空の職員採用、自身の企業への発注などの疑いが持たれている。

汚職対策委はサルマン国王が国王令により設置を命じたばかりで、容疑者に対する捜査や逮捕状の発行、渡航制限、資産の差し押さえなど広範な権限を与えられている。

国王令には「汚職を根絶し、犯罪者に責任を取らせない限り、自国は存続できない」と記されている。また、今回の拘束について、「不当に富を得るために公益よりも自身の利益を優先させ、権力を悪用した」ことが理由だと説明した。

アナリストらは、ムハンマド皇太子(32)が権力基盤を強化するため、国内の実力者を封じ込める狙いがあると分析している。

ムハンマド皇太子はわずか3年ほど前まではサウジ国内でほとんど無名の存在だったが、短期間で権力の座に駆け上がった。

サルマン国王は今年6月、王位継承順位1位だった当時の皇太子を解任し、ムハンマド氏を皇太子に昇格させた。ムハンマド皇太子はムトイブ王子を国家警備相から解任することでさらに基盤を固めるとみられていた。

サウジアラビアの主要株価指数<.tasi>は王子や閣僚ら拘束のニュースを受けて一時下落したが、すぐに上昇に転じ、前日より値を上げて引けた。長期的に改革が促進されるとの一部の期待を反映した。

拘束された有力者にはファキーフ経済計画相や国営石油会社サウジアラムコの取締役であるイブラヒム・アッサーフ元財務相、元リヤド州知事らが含まれる。また、建設大手ビンラディン・グループのバクル・ビンラディン会長やテレビ局MBCの所有者であるアルワリード・イブラヒム氏も拘束された。

情報筋などによると、有力者の少なくとも一部はリヤドの高級ホテル「リッツ・カールトン」で拘束されているという。

アナリストは今回の措置について、汚職摘発にとどまらず、ムハンマド皇太子が目指す改革に抵抗する勢力を封じ込める狙いがあるとみている。

サルマン国王は9月、女性の運転解禁を発表した。ムハンマド皇太子は娯楽産業の開発や外国人観光客の誘致を提案しているほか、サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を主導する。

シンガポールのラジャラトナム国際研究学院の上級研究員ジェームズ・ドーシー氏は、皇太子の改革に対する王家内部の反発はより広範囲に及ぶようだとし、皇太子はこれに対抗するため、コンセンサスによって統治する伝統を破り、王家や軍、国家警備隊などに強い支配力を示したと指摘した。

ただ、別の専門家ジョセフ・ケチチアン氏は、王家であるサウド家の利権は守られるとの見方を示し、国王や皇太子が実行しようとしているのは統治体制の近代化だと述べた。

サウジアラビアの一般市民の多くは、今回の取り締まりを評価している。

*内容を追加しました。

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