上海浦東新区を背景に、100人民元(MARK RALSTON/AFP/Getty Images)
中国政経分析

危機的状況でも崩壊しない中国共産党政権のカラクリ=何清漣、程暁農

何氏と在米中国人学者の程暁農氏は15日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の時事番組に出演し、中国政治・経済の今後の見通しについて話した。両氏が共同執筆した新書『中国:潰而不崩』(邦訳:中国-とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ ワニ・プラス』は5月、日本と香港で発売された。

世界各国の専門家は、第2の世界経済体となった中国について、「中国脅威論」を支持する派と、「強い」中国経済が世界経済成長に有利だと捉えて「中国強国論」を支持する派に分かれる。しかし、両氏の研究では、中国政治・経済は将来世界的な脅威にならない上、「強国」になることもなく、むしろ衰退していくと結論付けた。

中国が崩壊しない理由

何氏は、「すでに危機的な状況にある中国当局は、政権を崩壊させないために、2つのことを行っている。一つ目は、政権の合法性を確立させるために、経済の発展に力を入れていること。2つ目は、経済拡大と同時に、統治集団に富と利益の独占を認めること」と話した。

衝撃の記録 中国がん村の惨状 

あるボランティア女性の報告

「中国当局が経済を発展させたと同時に、各種の社会問題も山積した。経済が拡大する各分野に、国民の生存権が奪われている状況がみられる。たとえば、当局が不動産産業を繁栄させるために、農村部では強制土地徴用、都市部では強制立ち退きを実施する」

「1億人以上の農民と数百万人の都市部住民に、(収入源の)農用地と住み家を失わせた。汚染化学物質を排出する企業と地元政府が癒着することで、地方政府の財政収入が増え、官僚の懐に賄賂の金品が入るのに対して、土壌の汚染が深刻化し、全国の至る所に『がん村』が現れるようになった」

何氏によると、近年中国国民による大規模な集団抗議事件の直接的な原因は、強制立ち退きと環境汚染問題だ。一方、軍と警察当局を投入して抗議事件を鎮圧するため、中国当局がこの8年間に使った「国家安全費」は、国防費とほぼ同水準になっている。

程暁農氏は、「国家安全費」の拡大によって現在中国各地方政府の財政が圧迫されていると話した。過去4年間、中国31の主要省・市のうち、上海市、広東省、北京市、浙江省、江蘇省、福建省が財政的に黒字だが、残りはすべて赤字だった。各地の地方政府は中央政府の資金援助に頼っているという。

また何氏は、一つの政権が崩壊するには4つの条件があると話した。

「1つ目は、統治集団の内部にし烈な闘争が起き、最高権力者がそれをコントロールできなくなった時である。2つ目は、国民と政府との対立が深まり、政府が国民の不満を弱めることができなくなった時である。3つ目は、政府の財政が枯渇し、膨大な国家安定費を支払えなくなる時である。4つ目は、外敵が進攻してきた時だ」

1から3までの条件について、現在の中国共産党政権はその兆候がすでに現れているが、その状況はコントロールできているため、まだ政権崩壊には至らなかったという。

さらに何氏は、中国共産党が崩壊しない理由の外的要因として、中国社会で大きな混乱が起きることを、中国の民主化に唯一圧力をかけられる米政府が好まないことを挙げた。

 

中国経済失速がもたらす影響

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中国経済が今後一段と失速すると予測する何清漣氏と程暁農氏は、国内の中間層・低収入層が最も大きな打撃を受けるとの見解を示した。

中国経済のうち、個人消費を支える中間層は全人口の約50%を占めている。その中でも、下位中間層(世帯所得5000ドルから1万5000ドル、約56万円から168万円)が大半を占める。

過去20年間中国経済は、外資誘致と不動産部バブルにけん引され、高成長を遂げた。何氏と程氏は今後の中国経済は今までのような高成長が現れることはなく、いわゆる中国当局が示した『経済の新常態』時代に突入する」との見方を示した。

両氏は、過去20年間経済高成長の恩恵を受けた中間層は、経済の失速または停滞によって、2つの影響を受けると分析。まず深刻な失業問題だ。一部の外資企業の中国市場撤退で、現在ホワイトカラーの失業が増えているという。

中間層に与える2つ目の影響は、中間層が持つ主な資産である住宅の資産価格が下落することだという。

何氏によると、中国の家庭資産の約7割は不動産と住宅だ。不動産バブルによって、多くの都市部の中間層が「金持ちになった」と勘違いしている。

 

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「不動産バブルは中国の政治・経済・社会安定のあらゆる分野に悪影響を与えている。いま中国当局は不動産バブルの崩壊を望んでいないため、不動産価格の高騰を食い止めようとしている。このため、中国当局が今後不動産税(固定資産税に相当)の導入を計画している」と、何氏が語った。

中間層の収入と資産が縮小すれば、個人消費が大幅に落ち込むだろうとみられる。

一方、程暁農氏は、不動産税はいわば中国当局が中間層から徴収する政権安定化のための一つの資金源だと指摘した。

両氏はともに、低収入層が経済の衰退でより深刻な就職難と生活難に直面するとの見解を示した。

程暁農氏:道徳の崩壊は最大の問題

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何清漣氏と程暁農氏は同著書において、中国の現状を打開する糸口は「地方政府の自治」だ、と提案した。

清王朝の末期に辛亥革命が起き、その後アジア初の民主共和制国家「中華民国」が誕生した。両氏の研究では、この革命の後、中国社会に大きな混乱はなく、順調に中華民国に移り変わったことがわかった。「背景には、清王朝が1905年に実施した『地方自治章程』との新政策と関係する。政権の崩壊を予測した清王朝は、社会安定を図るために地方自治を導入し、地方の名士に一定の自治権を与えた」

両氏は、地方自治の前提は私有財産権を尊重することだと示したうえで、当局が地元の住民に選挙権、報道の自由、教育機関設立の自由を与えることも重要だと強調した。地方自治の下で、中国各地の地方政府は各地の経済・資源の状況に応じ、各自の発展方針を模索できる。

何氏らは、現政権も清王朝と同様に、「中国共産党政権後の中国」のために、地方自治を導入するべきだとした。

しかし、程暁農氏は楽観的ではないようだ。最大の原因は、現在の中国人の道徳水準の低さだという。「中国共産党は、中国伝統文化と中国人の固有の道徳観を破壊した。今、人々は金もうけばかりを追求し、利益のために平然と人を傷つける。人との間に信頼関係を全く築けない。将来中国が民主化を実現しても、依然多くの困難が立ちはだかるだろう」と懸念する。

(翻訳編集・張哲)

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