米商務省の鉄鋼輸入国制裁、中国に巻き込まれた韓国=経済専門家
米国・商務省の鉄鋼輸出国に対する第2制裁案は、中国と、米国の同盟国では唯一、韓国を明示した。韓国の経済専門家は、中国が主眼となる米国の通商圧力強化だが、韓国は「中国産の鉄鋼のバイパス輸出国」と見なされ、巻き込まれたとの見方を示した。
米商務省が17日に発表した通商拡大法(注1)第232条に関する調査レポートには、鉄鋼輸出に関して「ブラジル、中国、コスタリカ、エジプト、インド、マレーシア、韓国、ロシア、南アフリカ、タイ、トルコ、ベトナムなどの12カ国に53%の関税を課する」と明示している。
これに対して、文大統領は19日、世界貿易機関(WTO)に提訴し、米韓自由貿易協定(FTA)違反にあたるとみて対抗する姿勢を示した。朝鮮日報によると、韓国の大統領府関係者は「WTO提訴で韓国が勝訴しても米国が判定結果を履行しなければ、米国側に報復関税を課す」ことも視野に入れているという。
トランプ政府の韓国に対する貿易規制は、先月22日の韓国産の洗濯機と太陽光パネルへのセーフガード(注2)措置に続き、2回目となる。韓国内の専門家らは、今後の制裁対象は自動車部品、半導体など主力製造品にまで拡大する可能性もある、と懸念する。
文在寅政権の、対米通商に対する認識不足も問題になっている。韓国・中央日報は20日、文大統領が大統領候補時代から通商に関しては無関心で、外交公約だけに重点を置いたと述べ、候補時から「FTAの廃棄」を主張してきたトランプ大統領と相反すると指摘した。
また、韓国政府関係者らがトランプの強硬発言について「政治的な意図が込められた、でたらめな話」だと聞き流すなど、対米通商の文政権の安逸な態度が今回の事態を招いたと批判した。
韓国通商専門家「中国を主ターゲットとしながら韓国も巻き込まれた様相」
経済専門家らは、韓国が今回の鉄鋼輸入制裁国として上がった要因は、最終的に中国にあると分析した。ジョン・ウンミ韓国産業研究院・研究本部長は20日、韓国日報で「米国政府が(2015年から対中国貿易規制を本格化して)中国産鉄鋼のバイパス輸出国で、アジアに注目」していた背景を指摘した。
実際に韓国貿易協会が19日発表した各国の対米輸出入統計によると、2015年の中国の対米鉄鋼輸出額は18億6,400万ドルで前年同期比27.8%減少した。同年に韓国は22億1,200万ドルと6%の増加に対し、日本は15億4,700万ドルと9.8%減少した。ジョン氏はこの結果に対して「中国の対米鉄鋼輸出が減少してから、唯一韓国の輸出が増えたことを確認した米政府が、韓国を主な中国産鉄鋼のバイパス輸出国とみなしたのではないか」と説明した。
今回の制裁国に台湾は含まれていない。制裁国の選定基準について専門家らは、「米国の鉄鋼輸出量比輸入量及び増加率」と「EU経済圏との摩擦を避ける方向」で選ばれたと分析する。2017年の対米鉄鋼輸出が20.1%増の台湾が制裁国から除外されたのは、中国をけん制するために、米国の友好国であるという点を考慮したと分析されている。
ジェ・ヒョンジョン韓国貿易協会通商支援団研究委員は20日、韓国日報のインタビューで、「今回の、米国の制裁国リストをよく見てみると、中国を主なターゲットとして狙っていて、韓国は巻き込こまれた点が明らかになる」と語り、韓国が対米輸出品目を中国と差別化しなければ、規制はさらに強まると警告した。
注1:国家安全保障を脅かす輸入に制裁を加えられると規定した法律
注2:特定品目の輸入が急増し、国内業界に重大な損失が発生したり、その恐れがある場合にGATT(関税貿易一般協定)加盟国が発動する緊急輸入制限措置
(翻訳編集・齊潤)