2017年11月、イタリアのセビリア市で開催された人体標本展「ボディ・ワールド」の展示作品(CRISTINA QUICLER/AFP/Getty Images)
人体の不思議

物議を醸す人体標本展、ふたたび NZで今月開催

人体に通う血流や体液を合成樹脂に変え、人体を保存する技術を使用した人体標本の企画展示「ボディ・ワールド・ヴィータル」が4月23日~7月13日、ニュージーランドの最大都市オークランドで開かれる。

サッカーで遊ぶ姿、携帯電話で通話する姿など、展示用にさまざまなポーズを取る人体。公式ページによると、標本は150体。この特殊な保存法「プラスティネーション」は20年あまり前、ドイツ人解剖医グンター・フォン・ハーゲンス博士により考案された。

日本でも90年代に人体標本200体を展示する「人体の不思議展」が各都市で巡回。これまで、人体標本はホルマリンやアルコール漬けでしかなかった。プラスティネーション技術ならば、内蔵も腐敗せず半永久的に保存できる。全身をめぐる皮膜の下の血管の細部まで見えるし、触ることもできる。

同展運営側の公式発表によると、2012年に「閉幕」宣言するまでの10年、日本では650万人が来場した。人体標本の展示イベントは欧州、米国などの都市でも催され、これまでに世界20カ国、4500万人を動員した。

しかし、死体の展示は物議を醸すこととなる。この「作品」は一体、誰なのか。生存時に本人や家族から法的な同意を得ていたのかどうか。また、展示は多くの国で死体や埋葬、解剖などの関連法に違反する可能性が高い。さらに、人間の尊厳を侮辱しているとして倫理性を問題視する声もある。

日本の人体標本展示の開催では、厚生省が人体標本を「遺体」とみなし、京都府警が2011年、標本管理に違反した疑いで主催側を捜査した。名古屋、金沢などで催された展示会でも、死体ビジネスの問題が疑われるとして、有識者らが抗議の声をあげた。

2017年7月には、チェコのプラハで「人体展」が開催された。主催側は人体標本の個人情報、出所や人体に関する法的許可書を示さなかった。大紀元の取材では、一連の標本展示には弟が含まれている可能性があると主張する中国系カナダ籍の男性は、プラハに渡り、企画展の主催側を刑事告発した。男性の弟は2003年、中国の労働教養所に収容されたが、家族は一切の情報を受け取ることができず、生死さえわからないという。

この裁判を受けて、チェコ当局は、法的許可文書を提示しない人体展示を国内で禁じた。同様の理由で、フランスとイスラエル当局も身元不明の遺体の展示を禁止している。

中国で人体標本の量産

1999年、ハーゲンス博士は中国遼寧省大連に渡り、人体加工工場をつくった。ニューヨーク・タイムズの取材に答えた博士は、中国を選んだ理由について、本人や家族の同意はいらない新鮮な人体が大量に手に入り、医療技術を持つスタッフの人件費も安いためだという。また、現地政府の支持も得られ、供給された死体の加工処理の法的責任を問われる懸念はない。

プラスティネーション技術にビジネス勝機を見てか、中国現地では模造品の作成が始まった。かつてハーゲンス博士の助手を務めた大連医科大学教授・隋鴻錦氏は2002年、博士の許可なく同技術を盗用し、大連で新たな人体加工工場企業・大連鴻峰社を設立。米国企業で世界的に展示企画を行うプレミア・エキシビジョン社と隋氏はパートナー契約を結び、「人体の不思議展」、「新・人体の不思議展」、「人体の世界(ボディ・ワールド)」などへの人体標本を大量に貸し出したり、売却したりした。

新華社傘下の雑誌『瞭望東方週刊』は2003年、「中国は世界最大の人体標本の輸出国になった」と報じた。

人体の出所が問題視されると、プレミア・エキシビション社は公式サイトで、免責声明文を発表。「人体標本として展示された死体は、中国警察当局が提供した中国の公民・住民だ。中国の警察当局は、中国の刑務所から人体を入手している可能性がある」と明らかにした。

地獄絵図…大連にあった人体加工工場の元従業員による告白につづく

(文・佐渡道世)

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