中国北京の企業家 戸籍制度に怒り「十数億円納税も子供が入学できない」
人口の流動を制限する中国の戸籍制度は50年代に導入されてから、今も施行されている。90年代、経済の発展に伴い、農村から都市、都市から都市への移動は急増している。しかし、他の都市に転入しても戸籍をほとんど取得できない。医療、就職、福祉、教育などの面で制限を受けることになる。最近、時代の流れにそぐわない同制度に苦しんでいる、ある実業家の投稿が注目を集めている。
ソフトウエア開発を行う北京粉筆藍天技術有限公司の創業者・張小龍氏は22日、ソーシャルメディア「微博」で、北京市で戸籍と学籍を持っていない子供は私立の小学校にさえ入学できない実情を嘆いた。同氏は4年前、地方都市から北京に移り住んだ。
戸籍がなければ、公立小学校の就学は認められない。張氏によると、受け入れてくれる私立の学校を見つけるまで2年かかった。しかし入学直前になって、北京市に学籍がないとの理由で入学を拒否された。
張氏はこれまで、所得税400万元(約6920万円)、会社の法人税8000万元(約13億8400万円)を北京に納付したという。しかし、戸籍問題で、自身も北京市民と同じ医療・福祉を享受できないうえ、「このクソ政策に子供が教育を受ける権利まで奪われた」と投稿で強い不満を示した。「就学できなければ、会社を他都市に移転する」
北京市政府の統計によると、2017年末まで市内の常住人口は2170万人。北京市に戸籍を持つ人口は1359万人。地方出身の800万人の子供は北京の公立学校に就学できないとの試算だ。
地方出身者の子が私立学校に入学する場合、親の北京での就職証明書、戸籍謄本、北京市居住証など5つの証明書が必要だ。しかも、高校卒業後、北京で大学入学試験を受けることはできない。戸籍のある都市に戻って受けなければならない。
また昨年、季節労働者の追放政策を実施した北京市政府は、市内の農民工の子供を対象にした学校を相次いで閉鎖した。
ネットユーザーらは、張小龍氏の投稿について、「富裕層の子供でもこのような不公平な扱いを受けているなら、一般人の私たちはなおさらだ」「たくさんの税金を払ってもらったのに、戸籍取得の門戸が開かれていない」と口をそろえた。
また、張氏に対して
「アメリカに移民して!米国パスポートがあれば、就学問題が完全に解決できる」
「なぜ移民しないのか?この国にとってあなたはただのATMだ」
「国籍を変えれば、悩みが全部消えるから」と提案する人もいる。
さらに、「(書き込みは)すぐ削除されるだろう。会社への(当局の)捜査もありそうだ」と張氏を心配する声が上がった。張氏はその後、書き込みを削除した。
中国当局は1958年、戸籍政策『戸口登記条例』を実施し、中国国民を「農業戸籍」と「非農業(都市)戸籍」に分類した。そして農村部から都市部への人口移動を制限した。この制度の下で、医療、保健、教育、住宅購入などさまざまな面において、農村部住民は一段低い存在と位置付けられたため、「格差を生む温床」と批判されてきた。2016年9月、中国当局はこれまでの二元的管理の戸籍制度を一本化し、「住民戸籍」に転換した。それでも、どの地の戸籍を持つかによって、受けられる公共サービスが制限されている。
(翻訳編集・張哲)