仏諜報局高官、中国人女性通訳のハニートラップにはまる?仏検察は起訴
フランスの元情報官は北京滞在中、通訳だった中国人女性によるハニートラップにかかった疑いがある。この情報官は現在、「深刻な国益侵害」の容疑で起訴されている。
引退したフランス情報部高官アンリ・M(71)とピエール・マリー・H(66)は27日、国の機密を外国勢力に渡し国益を侵害した容疑で検察により起訴され、パリ近郊で拘留されている。
フランス週刊誌『日曜週刊(Le Journal du Dimanche)』によると1997年、フランスの対外治安総局(DGSE)局長だったアンリ・Mは、北京のフランス大使館の通訳の女性と個人的な関係を持った。安全保障関係者もこの報告内容を認めている。
この女性通訳の名前は明かされていない。国防省によると、この女性は中国共産党の諜報部所属もしくは情報収集者との疑いがあり、昨年12月にスパイ容疑が浮上した。
ピエール・モレル仏大使は当時、2人の関係を懸念し、1998年に対外治安総局長だったアンリ・Mをフランスに帰国させた。
アンリ・Mは情報当局を退いたのち、中国家具を輸入するビジネスを始めた。その後、フランスにいた妻と離婚し、2003年に北京に渡った。翌年、中国人女性通訳との結婚届をフランス大使館に提出した。夫婦は中国南部・海南島に移り、レストランをオープンした。
もう一人の情報部高官ピエール・マリー・Hについては、公開された情報は多くない。彼の逮捕は、アンリ・Mの疑惑が発覚した20年後だ。
仏誌「日曜週刊」の記者であるフランク・レノウ氏は、「対外治安総局は危機感を抱いていたが、同時に中国の情報機関が、アンリ・Mを利用してフランス側にニセ情報を与える恐れもあると考えていた。アンリには二重スパイの疑いがある」と分析した。
仏フローランス・パーリ国防相は2人の元情報官とそのうちの一人と結婚した中国人女性を起訴したことを確認しているが、容疑に関係した外国勢力が中国であるかどうかは言及しなかった。
中国共産党が人の性的欲望を利用した諜報工作を用いることは知られている。日本もターゲットとして例外ではない。日本のフリージャーナリストのスクープによると、首相を務めた自民党・橋本龍太郎議員を丸め込んだのも中国人女性通訳だった。
橋本氏が自民党幹事長を務めた80年代後半、中国衛生部通訳でもあり、無償援助プロジェクト実務責任者でもあったこの女性は、橋本氏に接近し、中日友好病院など病院への無償援助を働きかけた疑いがある。橋本氏は国会答弁で、この女性通訳との関係を認めている。
2016年1月、英国の諜報機関MI6は、中国の女性スパイによるハニートラップは、過激組織「イスラム国」(IS)よりも国家安全保障にとって重大な脅威だという報告を、当時のキャメロン首相に提出している。また、英テレグラフ紙によると、テリーザ・メイ政権も同年9月に開かれた杭州G20では「ハニートラップと盗聴に警戒するよう」訪中団に警告していた。
英国は過去、実害を経験している。2008年に英ゴードン・ブラウン首相が訪中時、首相特別補佐官は「中国の美女集団と、ロシアのブロンドの美女集団に声をかけられた」という。そのなかの美女の一人とベッドをともにした英政府関係者は、薬物を投与され、意識のないうちに携帯電話と多くの書類を盗まれた。
(編集・佐渡道世)