米、チャイナモバイルの市場参入計画を却下 中国当局の監視に懸念
米トランプ政権は、国家安全保障上の理由として、中国国有通信大手中国移動(チャイナモバイル)の携帯通信事業参入を阻止する動きが出ている。同社が米でサービスを提供すれば、米国民もネット検閲の対象になりかねないと指摘した。一方、同社サービスを利用する中国人観光者が米国に訪れる際でも、中国のネット検閲システムがついて回る。
チャイナモバイルは2011年に、米連邦通信委員会(FCC)に対して米市場参入の申請を提出した。米国と外国との国際音声トラフィックサービス提供を望んでおり、米国内でモバイルサービスを展開するつもりはないとしていた。
ブルームバーグによる、商務省の電気通信情報局(NTIA)は2日電子メールで、申請を却下するよう米連邦通信委員会(FCC)に勧告した。同メールでは、チャイナモバイルの免許申請は「容認できない国家安全保障と法執行上のリスクを突きつける」と米情報機関担当者の提言が記された。また「中国政府に利用・操作されやすい」と指摘した。
4日付の米紙ワシントンポストは、チャイナモバイルは中国当局が統括する企業で、同通信サービスを通じて米国民の個人情報収集が可能になると懸念した。
また、同社サービスを利用する中国人観光客は海外に行っても、中国当局のネット検閲を受けている。同紙は中国人観光客を対象に調査・取材を行った。チャイナモバイルの通信サービスを利用する中国人観光者は、米国にいても、FacebookやTwitterにアクセスができないことが分かった。
ある一人の中国人観光者はワシントンポストに対して、米国でチャイナモバイルのローミングサービスを使う際、中国国内にいる時と同様に、ネット検閲システム「グレートファイアウォール」の制約を受けていると述べた。
チャイナモバイルは同ウェブサイトで、北米地域で国際ローミングサービスの提供を計画しているとした。しかし、利用者がFacebookやYouTubeなどにアクセスできるかどうかを説明していないという。
同紙は、チャイナモバイルが今後米国で通信サービスを展開すれば、米国民や在米中国人が知らぬ間に中国当局のネット規制の対象になる可能性があるとの見解を示した。
ロイター通信は今回の申請却下を前例として、米国は今後も中国の通信企業に対する参入制限を相次いで打ち出す可能性がある、と分析した。
一方、チャイナモバイルは100%子会社の日本法人「China Mobile International Limited(チャイナモバイル・インターナショナル)」(東京都港区)を今年5月25日に設立した。訪日旅行者にデータローミングサービスなどを提供するほか、日本に進出する中国企業や海外に進出する日本企業にサービスを提供するという。開所式で、同社副社長は「今後、5Gネットワークなどの新技術の連携を推進していきたい」と発言した。
中国共産党機関紙・人民日報電子版は3月、チャイナモバイルのユーザー数は8億9100万人で、国内国有通信会社のなかで最多だと報じた。2位の中国聯合通信有限公司(チャイナユニコム)の2億8700万人、3位の中国電信集団有限公司(チャイナテレコム)の2億5500万人を大きく引き離した。
(翻訳編集・張哲)