貞観政要
唐太宗 無知であることを知ることの大切さ
中国の唐の時代は中国史上でも最も栄えた時代の一つである。中国史上、屈指の名君として名高い唐太宗は為政者として自らを厳しく律して政治にあたり、太宗の治世は「貞観の治」と呼ばれ中国史上最も良く国内が治まった時代とされている。
『貞観政要』は唐太宗と太宗を補佐した名臣との政治問答集で、日本では徳川家康が非常に愛好していたのをはじめ、数々の為政者が『貞観政要』から為政者はどうあるべきかを学んでいる。
唐太宗 無知であることを知ることの大切さ
貞観のはじめ、太宗は、蕭瑀(しょうう)に言った。「私は若い頃から弓矢を好んで使い、われながらその技を極めたと思っていた。最近、私はできの良い弓、十数本手に入れたので、それを弓つくりの職人にみせてみた。
すると職人は「これらの弓はみな材料が良くない」と申した。「理由を聞くと、私が見せた弓の材はみな芯が歪(ゆが)んでいるという。またそのような木は木目まで歪んでいて、どんなに強い弓であっても矢は真っすぐに飛ばず、良い弓ではないと答えた」
そこではじめて悟ったのだ。「私は弓をもって天下を平定した。弓を使うことは多かったが、それでもこのように弓の事をよく理解してはいなかった。私はまだ天下を平定してから日が浅く、私が得た政治の要諦も弓矢ほど深いものではない。そもそも弓矢の理解もこのように誤っていたのだ。私の政治の理解などたかが知れたものだ。
これから太宗は宮廷の五品以上の官吏[1]に詔を出し、一年中、交代で内省に宿直させて、謁見するごとに、皆を近く呼び寄せ席を用意し、宮廷の外の事について意見を聞き、農民の暮らし、政治の良し悪しを知ることに努めた。
[1]中堅クラス以上の官僚、品は唐の時代の官僚の階級で高い順に一品から九品までの階級があった。
(大道 修)
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