顔認証システムを搭載した監視カメラの展示。10月24日、第14回公共安全保障の中国国際展示会が北京で開かれた(NICOLAS ASFOURI/AFP/Getty Images)

「信用を失い罰下る」ディストピア感じる中国鉄道の車内放送が話題

中国共産党政府は国民の社会信用度を測る「格付けシステム」を導入し、国内14億人の活動を監視している。中国を訪れた海外のジャーナリストが最近、中国の露骨な社会主義体制を示す高速鉄道の車内アナウンスを録画しSNSに投稿したところ、18時間以内で100万回以上再生された。

「これは将来のディストピア(ユートピアとは正反対の社会)を見せてくれる」フリーランスの作家ジェームズ・オマーレイ氏は最近、北京発上海行の高速鉄道の車内で流れるアナウンスを動画で記録した。放送は、ルールを破ることは社会信用度失墜につながり罰が下ると警告している。「切符を買わずに乗車した者、公共の場で喫煙した者は所定の規律により処罰される。その行動は個人信用システムに記録される」と英語で女性の音声が流れる。

オマーレイ氏が10月29日にTwitterで、動画を投稿したところ、翌30日には101万回以上再生、9000回のリツイートを記録した。

動画を見たユーザは、出張や観光目的による外国人も社会信用システムが適用されるのかどうか尋ねた。オマーレイ氏は外国人は適用外のはずだが、2018年3月以降、中国当局は外国人の指紋採集など入国者の生体情報を収集していると書いた。

社会信用システムは、2014年に中国共産党政府が発表した「社会信用システム構築計画の概要」にある。

たとえば日本や米国などの民主主義国家ならば、有罪判決の下った人物には社会的制裁が加えられる。しかし、中国共産党による制裁システムはそれにとどまらず、軽度な交通ルール違反、税や罰金の未払い、デモの参加やインターネットにおける発言や表現など、信用度の低い人物が家族や知人だったりするだけで「社会信用度」ポイントが失われる。

信用スコアは350~950点で、350~549点は「劣る」に入り、鉄道や飛行機のチケットが買えなくなったり、移動の自由が制限される。さらに携帯電話やパソコンなどの電子機器購入、住宅や金融ローン契約、就職や子供の就学先の制限などが科せられる。2020年までに全面運用し、それまではデータベース統合段階となる。

10月初め、ペンス米副大統領は対中政策に関する演説のなかで、中国の「社会信用システム」制度に言及した。「(作家の)ジョージ・オーウェルの描いた超監視社会のようであり、人々の生活を厳しく統制しようとしている」と批判した。

中国本土の一部の都市では、信用度の低い人物の名前がブラックリストとして一般公開されている。都市部では、屋外に設置された顔認識ソフトを使ったAI監視カメラが個人情報を収集し、公安当局に報告している。中国当局は2020年までに、新たに4億5000万台を設ける計画がある。

2017年12月、英BBCの名物記者ジョン・サッドウォース氏は、中国の監視システムがどれほどの速さで個人を追跡できるかを実験した。当局の協力のもと、自らの顔写真を貴州省貴陽市の警察に提供したのちに、記者は「逃亡」を試みた。全国顔識別システム「天網」のデータベースで「重要指名手配」に指定されたサッドウォース氏は、わずか7分後に市内長距離バスターミナル駅で発見された。

(編集・佐渡道世)

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