続くカナダ人拘束「ショックだが役立つ警告」専門家、中国覇権主義に警戒うながす
カナダ政府は19日、中国当局が新たにカナダ人を拘束したことを明らかにした。12月1日、カナダ政府が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)を逮捕して以降、カナダ人の拘束は3人目。
中国当局はカナダ人を拘束することで、米国の要請に応じたカナダ政府に圧力をかけている。米専門家は、カナダを含む世界の同盟国を、米国から分離させようとする狙いがあると分析する。いっぽう、この狙いとは裏腹に、米やカナダなど各国は、覇権主義的な中国共産党政権の脅威を改めて強く認識している。
カナダ司法当局は1日、米政府の要請で、同国バンクーバー国際空港でメキシコから香港に向かう途中の孟氏を逮捕した。米国側によると、孟氏が対イラン経済制裁に違反し、米の金融機関に虚偽の報告を行ったという。孟氏は8億5000万円の保釈金を支払い、条件付きの自宅滞在を許可されている。
カナダ政府は、孟氏の逮捕と在中カナダ人の拘束は関連がないとしている。
いっぽう、ブルームバーグ評論員でジョンズ・ホプキンス大学先進国際研究科教授ハル・ブランド氏は19日付の記事で、孟氏が逮捕以降、中国当局がカナダ人を拘束するのは「報復行為」であり、事実上の「人質」と分析する。
「中国当局が米国よりもカナダを締め付けていることに戦略的な意味を持つ。『罰』を与えられた米国より小さく弱い国は、今後の行動を熟慮するように『しつけ』られている。これは、中国に地政学的な開放をもたらすという深刻な問題を引き起こす」
強硬派の中国メディア・環球時報は、ファイブアイズ(UKUSA協定)を締結する米・英・カナダ・豪・ニュージーランド5カ国の国民は、カナダ人と同様に拘束をいとわないと脅迫している。「もし1人を逮捕するなら、こちらは2人を捕まえるだろう」
ブランド氏は、法治理念の欠ける中国当局がこのような対応をするのは、当然と見ている。また、すべての民主国家は、ファーウェイの孟晩舟CFO逮捕とカナダ人拘束で中国当局の「醜い正体」を認識できたとの見方を示した。
民主国家、特にカナダは、中国当局を提携パートナーとして見なすかどうかを再検討しなければならない。「中国国内の人権問題などを批判する諸外国政府に対して、中国当局は経済・外交上で報復で返答してきた」
中国共産党政府は、あらゆる手段で民主主義の崩壊を進めているという。「自国では最も進歩した技術を警察公安に与え、世界では東南アジアやラテンアメリカの権威主義国を支援し、海外の民主主義体制を崩壊させるために賄賂で言論の自由を抑圧した。中国は野心的に世界の覇権を狙い、自由主義に取って代わろうとしている」
ブランド氏は、共産党体制の中国は内政と外交の境目がない「病的なほどの権威主義」と形容する。「国際的なルールを無視した卑劣で傲慢な態度は、世界的な舞台でも中国国内と同じ振る舞い」
その象徴的な事例として2010年、ハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)に出席した中国の楊潔〇(竹かんむりに虎)外相の発言を挙げた。会議では、長引く南シナ海の領海係争で米国の仲介役を担うことが提起された。これに楊外相は反発した。「中国は大国、あなたたちは小国、これは事実だ」
ブランド氏は、カナダ人の拘束は非常にショッキングなことだが「民主主義国家にとって、役に立つ警告だ」と主張する。
(翻訳編集・張哲)