(Photo by Peter Macdiarmid/Getty Images)
(Photo by Peter Macdiarmid/Getty Images)
体質改善

病気だけじゃない 漢方治療

体質改善という言葉は、漢方治療の時によく使われます。つまり、漢方治療は症状を抑えることより、症状が生じた体質の状況を改善し、より根本的に病気治療することを目指しています。その場合、長い時間をかけて根気よく治療し続ける事が必要になります。

私の経験の中で、このような患者がいました。ある30代の女性患者は、肩こり、眼精疲労、湿疹、月経時の情緒不安と強い倦怠感などの症状で、3年前から鍼灸(しんきゅう)と漢方薬の治療を受けてきました。これらの症状は、漢方医学の体質判断からすると、「肝脾不足、痰湿(たんしつ)停滞(※)」です。これに対して、彼女は「補肝健脾、化痰利湿(けたんりしつ)(※)」という治療方針で、肝経と脾経のツボを中心に鍼灸を行い、漢方薬を投与しました。

治療を始めると、次第に症状が改善され、月経周期とともに現れる情緒不安や強い倦怠感などの症状が出なくなり、季節の変わり目に現れる湿疹、目の痒みなどの症状も出なくなりました。これとともに、長年気になっていた悪玉コレステロールの数値は3年前の240から現在の140までに下がりました。

この患者さんは、高脂血症の家族歴があり、運動と食事に注意し、血中脂肪を下げる薬を試していたのですが、悪玉コレステロールは一向に下がらなかったのです。漢方と鍼灸の治療は、特に血中脂肪を下げる目的はなかったのですが、結果的に体質が改善され、悪玉コレステロールも自然に下がりました。

このように体質改善ができた時は、たとえ治療をやめても、体質が崩れない限り症状は戻らないはずです。

*痰湿―体内に滞った水分からできる代謝異常物質のこと

*化痰利湿―痰を除き、体内の余分な水分を排出させること

(漢方医師・甄 立学)

おすすめ関連記事:肩こりに効くツボとは

 

関連記事
年齢とともに失われる肌の潤いやハリ。中医学では「滋陰養血」と臓腑の調和が美肌の鍵とされ、真珠粉や漢方素材による内側からのケアと、ツボ押しや美容茶など外からのアプローチを組み合わせることが推奨されています。
発酵食品は日本の風土と体質に合った「土」の食養生。五行の観点から見ると、肝を整え脾を助け、腸と心身のバランスを取る伝統的な智慧が込められています。
清明の季節は「肝」の働きが高まり不調も出やすくなります。今が旬の菜の花は、肝の熱を冷まし気の巡りを整える優れた食材。簡単に取り入れられる養生レシピとともに、春の五行養生をご紹介します。
年齢とともに増える抜け毛や白髪。実は日々の食事で改善の余地があります。髪に必要な7つの栄養素と、中医学が教える髪と内臓の深い関係について解説します。
中医学では、緑内障の原因を「怒りや憂うつ」「代謝機能の低下」「夜更かしによる精の消耗」など全身の気血の乱れとして捉え、漢方や鍼、体操で改善を図ります。