体質改善という言葉は、漢方治療の時によく使われます。つまり、漢方治療は症状を抑えることより、症状が生じた体質の状況を改善し、より根本的に病気治療することを目指しています。その場合、長い時間をかけて根気よく治療し続ける事が必要になります。
私の経験の中で、このような患者がいました。ある30代の女性患者は、肩こり、眼精疲労、湿疹、月経時の情緒不安と強い倦怠感などの症状で、3年前から鍼灸(しんきゅう)と漢方薬の治療を受けてきました。これらの症状は、漢方医学の体質判断からすると、「肝脾不足、痰湿(たんしつ)停滞(※)」です。これに対して、彼女は「補肝健脾、化痰利湿(けたんりしつ)(※)」という治療方針で、肝経と脾経のツボを中心に鍼灸を行い、漢方薬を投与しました。
治療を始めると、次第に症状が改善され、月経周期とともに現れる情緒不安や強い倦怠感などの症状が出なくなり、季節の変わり目に現れる湿疹、目の痒みなどの症状も出なくなりました。これとともに、長年気になっていた悪玉コレステロールの数値は3年前の240から現在の140までに下がりました。
この患者さんは、高脂血症の家族歴があり、運動と食事に注意し、血中脂肪を下げる薬を試していたのですが、悪玉コレステロールは一向に下がらなかったのです。漢方と鍼灸の治療は、特に血中脂肪を下げる目的はなかったのですが、結果的に体質が改善され、悪玉コレステロールも自然に下がりました。
このように体質改善ができた時は、たとえ治療をやめても、体質が崩れない限り症状は戻らないはずです。
*痰湿―体内に滞った水分からできる代謝異常物質のこと
*化痰利湿―痰を除き、体内の余分な水分を排出させること
(漢方医師・甄 立学)
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