白がゆは、昔から胃にやさしい滋養食として大切にされてきました。病み上がりや体力の落ちた人、高齢者や子どもにとって、温かい白がゆが胃を守り、体に潤いを与えてくれるのは確かです。しかし現代では、体質も生活環境も大きく変わっています。体質を考えず、季節も気にせず、毎朝のように白がゆだけを食べていると、かえって体に冷えと湿気がたまり、体の土台を弱らせてしまうことがあります。
特に今年の丙午年の年明けは、冬の終わりから春分前にかけて、寒さと湿気の影響が強い時期にあたります。このような時期は、食事にもより慎重さが求められます。昔の養生法が間違っているのではなく、時代が変わり、人の体も変わったという点を見落としてはいけません。
現代人の体は、もはや「淡白な食事」だけでは支えきれない
今の人の胃腸は、昔の人の胃腸とは同じではありません。
冷たい飲み物、アイスクリーム、冷菓、サラダ、牛乳、甘いお菓子を日常的に口にし、揚げ物や焼き物、味の濃い食事が当たり前になり、夏は一日中エアコンの冷気にさらされ、外からも冷えが入り、長時間座ったまま動かず、汗をかく機会も少ない。
中医学には「長く座り続けると筋肉が弱り、脾の働きが損なわれる」という教えがあります。体を動かさないと気の巡りが滞り、巡らない気は湿気を生みます。内側と外側の両方から冷えと湿気に挟まれ、胃腸の消化・吸収する力は、すでに大きく消耗しています。
気の流れが滞ると、血やエネルギーを生み出す力も弱まり、体は十分な栄養を受け取れません。その一方で、余分な水分や老廃物はたまり続け、血液はドロドロになりやすく、さまざまな不調の原因となります。
お米が悪いのではなく、「白くしすぎた」ことが問題
お米そのものに罪があるわけではありません。お米は本来、人を養うために与えられた大切な穀物です。古い薬草書にも、性質は穏やかで、胃腸を助け、体の中心のエネルギーを補うと記されています。
ただし、注意すべき点が二つあります。
一つ目は、お米は水田で育つ穀物であり、もともと冷やす性質を持っているという点です。体に十分な温かさがある人には問題ありませんが、冷えや湿気をため込みやすく、胃腸が弱っている現代人には、温める力が足りず、かえって冷えを強めてしまうことがあります。
二つ目は、現代の精米技術が進みすぎていることです。米ぬかがほとんど削られ、真っ白な米粒だけが残っています。食感はよくなりますが、栄養のバランスは崩れています。

本来、米ぬかの部分は少し黄色がかっており、「土」の性質を持ち、胃腸を支える大切な成分が含まれています。それが削られ、「白」だけが残ると、肺を潤す働きはあっても、水分を増やしやすく、湿気をためやすくなります。
胃腸を養う土の部分が失われ、湿気を生みやすい性質が強まる――これが、精白米に潜む現代的な問題です。
体の温かさが不足すると、補っても身につかない
簡単に言えば、現代人は体の温かさを消耗させ、冷えや湿気、脂っこいものばかりを胃腸に送り込んでいます。この状態で、いきなり栄養を補おうとしても、うまくいきません。
たとえるなら、弱り切った老馬を休ませることなく、無理に走らせるようなものです。走らせれば走らせるほど、かえって衰弱してしまいます。
胃腸がうまく働いていなければ、どんな滋養のあるものも消化できません。急いで補えば補うほど負担が増え、結果として「補えない体」になってしまい、かえって虚弱が進んでしまいます。
丙午年の年初は特に冷えと湿気が強い
今年の丙午年を五行の視点で見ると、天干の「丙」は水の影響を受けやすい年とされます。水は冷やす性質を持ち、下へ下へと流れやすく、胃腸や下半身に影響が出やすくなります。そのため、この年は特に、冷えと湿気が体の中心部に入り込みやすいのです。
さらに、冬の終わりの大寒から春分前までの時期は、一年の中でも「最初の気」が巡る重要な期間とされ、寒さの影響がまだ強く残っています。この時期は、胃腸だけでなく、腎にも負担がかかりやすくなります。
ここで冷えと湿気をそのままにしてしまうと、春の後半から夏にかけて、外は暑いのに体の内側は冷えている状態になりやすくなります。その結果、上半身は熱っぽく、下半身は冷える、体の内と外のバランスが崩れ、夏バテやさまざまな不調が例年より起こりやすくなります。
そのため、今年の養生で最も大切なのは、急いで栄養を補うことではなく、冷えと湿気を取り除き、胃腸を立て直し、体の土台を固めることです。
お粥はやめる必要はないが、「飲み方」が大切
では、お粥が好きな人は、完全にやめたほうがよいのでしょうか。答えは、もちろん違います。大切なのは、組み合わせと方向性です。白がゆを長期間、単独で食べ続けるのは避け、次のような工夫をするとよいでしょう。
- 生姜とナツメを一緒に煮ることで、体を温め、冷えを散らし、消化を助けます。
- はと麦や小豆に生姜を加えると、体を冷やしすぎずに余分な湿気を出し、下痢しやすい人にも向いています。
- 山芋、かぼちゃ、雑穀(特にきび)を生姜と一緒にじっくり煮ると、胃腸を温めながらやさしく補えます。
- さらに陳皮を加えると、胃腸の巡りが良くなり、湿気をためにくくなります。
- 煮る時間は少し長めにし、穀物の性質をやわらかく引き出すことで、体を温める力も高まります。

ただし、これらはあくまで不調を防ぐための日常的な養生であり、すでに病気がある場合は、医師の指示に従ってください。
結び
白がゆが体に悪いわけではありません。ただ、冷えと湿気が当たり前になり、体の温かさを消耗しがちな今の時代では、胃腸を養う方法も見直す必要があります。「淡白であればよい」という考えだけでは足りません。まずは冷えと湿気で弱った体の土台を立て直すこと。その上ではじめて、本当の意味での滋養が生きてくるのです。
(翻訳編集 華山律)
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