2017年8月、北京で開かれた国際書籍展示会の様子(GREG BAKER/AFP/Getty Images)

「毛沢東、尖閣諸島、法輪功が禁止用語」中国共産党、海外出版社にも自己検閲要求 

中国の印刷企業に書籍の印刷を注文したオーストラリア企業が、中国共産党中央宣伝部の定めた出版物の検閲用語一覧を受け取り、「自己検閲」を要求されていたことが分かった。対外工作に注力する共産党政権は、海外企業の出版物にも国内と同等レベルの検閲を押し付けた。

この一覧は、豪チャールズ・スタート大学(Charles Sturt University)の教授で中国専門家クライブ・ハミルトン(Clive Hamilton)氏がSNSで暴露した。同氏によれば、多くの西側諸国の出版社は、印刷料金の安い中国企業に外注している。

公開された一覧はすべて英字で書かれており、「政治異見者」118人のリストには弁護士・陳光誠氏、同じく高智晟氏、民主活動家・胡佳氏、チベット精神指導者ダライ・ラマ14世、ウイグル人学者イリハム・トフティ氏の名前が連なる。

ハミルトン氏は2018年3月、中国共産党による浸透工作について記述する書籍『 静かなる侵略(Silent Invasion)』を発刊した。予定していた豪州大手出版社アレン・アンド・アンウィン(Allen & Unwin)社が同書の印刷を拒んだ。ハミルトン氏はSNSで、中国政府の訴訟や、中国での印刷依頼が将来できなくなることを恐れたためだと書いている。

一覧には近代の中国共産党中央委員会や常任委員会を含む指導部の名前がある。「毛沢東」や「習近平」に言及を避けたのは、共産党指導部を批評できないことを意味している。

社会を揺るがす重大事件では、1989年6月4日天安門事件、雨傘運動、ジャスミン革命、香港・台湾・チベットの各独立運動、ウイグル騒乱、法輪功などがリストアップされた。

用語一覧は印刷依頼主の自己検閲のほかに、共産党宣伝部の監査を受けなければ印刷できない。地図がある場合は、政府機関の10~15日の審査がある。キリスト教、ユダヤ教など信仰も検閲対象となる。日本関連用語では神道、魚釣島、尖閣諸島がある。

中国当局は国内と同等の言論統制を外国機関にも要求する。英ケンブリッジ大学出版局は2017年8月、天安門事件や法輪功など中国共産党が「敏感問題」とする関連論文や書評300件以上を、中国から閲覧できないよう遮断した。学術界などから多くの批評を受けて、同局は遮断を取りやめた。

英日刊紙ガーディアンは2018年12月、共産党宣伝部が莫大な資金を投じて米国、英国、日本など世界30カ国以上の大手メディアに「中国の良い話を伝える」ための宣伝記事を掲載させていると報じた。同紙は、プロパガンダを通じて、共産党の意向に傾くよう世論操作を図っていると分析する。

(編集・佐渡道世)

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