外務省は4月23日、2018年外交青書を発表した。中国のパワー拡大で国際秩序は不確実性を増したとした。写真は2016年、外遊前に記者会見する安倍首相(GettyImages)

中国のパワー拡大、国際秩序は不確実性さ増す=日本外交青書

外務省は4月23日の閣議で、2018年の国際情勢と日本の外交記録とする平成31年度版外交青書を配布した。同書は文頭に、日本を取り巻く安全保障環境は引き続き大変厳しい状況にあると危機感を表現した。また、国際社会・政治では、中国の力の拡大で、パラーバランスはかつてないほど変化し、既存の秩序は不確実性を増したと記した。

脅威と多様性、複雑化に関しては、特にアジア地域について、領域主権や権益をめぐり、有事でも平時でもないグレーゾーン事態の増加を指摘。また「ハイブリッド戦」のような、軍事と非軍事の境界を意図的にあいまいにした手法が用いられる事例もあるとした。さらに、情報操作等を通じて外国から民主主義への介入などの事例を認めているとも書いた。具体例は明記しなかった。

また、科学技術の進歩により、サイバー空間や宇宙空間といった新たな領域における活動が活発化。大きな機会と共に新たなリスクや脅威も生み出し、ルール確立は発展途上にあるとした。

外交青書は、安全保障の分野には多くページを割いている。たとえば、IoT(モノのすべてがインターネットに接続する社会)、ロボット、人工知能(AI)、量子技術などの技術革新は、国際社会で優位性の競争のみならず、安全保障分野に活用する動きも活発化しているとした。

中国については、北朝鮮と共に「大変厳しい状況にある東アジアの安全保障環境」と表現した。北朝鮮による核・ミサイル開発については、核ミサイル開発の完全で検証可能かつ不可逆的な方法での廃棄を行っていないという。しかし、昨年まで記載されていた、最大限の圧力を継続するとの表現は省かれた。

中国は、不透明なまま軍事力を強化させ、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の優位性確保を重視している。

また、東シナ海南シナ海などで、「既存の海洋法秩序と相いれない独自の主張に基づく行動や力を背景とした、一方的な現状変更の試みを続けている」と非難した。

日本南部の周辺海域でもある東シナ海においては、尖閣諸島周辺で中国船の領海侵入が続き、海軍艦艇・航空機の活動も活発になったとした。さらに、境界画定のない地域で一方的な開発、日本周辺海域で日本の同意を得ない調査活動や同意内容と異なる調査活動も多数あると報告している。

南シナ海では、係争領域の島やサンゴ礁を埋め立てて軍事拠点化し、2018年にはミサイルシステムや電波妨害装置の配備、爆撃機の離着陸訓練を行い、軍事行動の活発化を詳細に指摘した。

いっぽう、外交青書のなかでは、対中関係について「大局的観点から、中国との安定的な関係構築は極めて重要」と例えた。同時に、東シナ海における中国による「力を背景とした一方的な現状変更の試みは断じて認められない」とし、東シナ海を「平和、協力、友好の海」とするための意思疎通を強化するという。

外務省は、日本にとって望ましい安定した国際環境の創出のために、積極的な平和主義を掲げて、地球儀を俯瞰する外交を展開してきたと解説。安倍首相はこれまで78 カ国と地域、河野外務大臣は、2017年8 月の就任以来、63カ国および地域を訪問した。

外務省は、国際社会における日本の存在感は着実に高まり、安倍総理大臣と各国首脳、河野外務大臣と各国外相や国際機関の長との個人的な信頼関係も深まったと説明。今後も引き続き、各国リーダーと信頼関係を築き、日本の国益増進と世界平和および繁栄のため、国際社会を主導するとした。

日本外交の6つの重点分野として、日本の国益を守り増進する観点から、1.日米同盟の強化および同盟国・友好国のネットワーク化の推進 2.近隣諸国との関係強化 3.経済外交の推進 4.地球規模課題への対応 5.中東の平和と安定への貢献 6.「自由で開かれたインド太平洋」の推進取り組みという6つの重点分野を挙げた。

(編集・佐渡道世)

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