米シンクタンクで拉致問題セミナー、被害者家族が参加 日本政府主催

米保守系シンクタンク・ハドソン研究所、日本政府、および米NGOの北朝鮮人権委員会(HRNK)は5月3日、北朝鮮による日本、韓国、アメリカ、およびその他の国の国民の拉致に対処するセミナーを開催した。

北朝鮮の日本人拉致被害者家族と、平壌で拘束され米国帰国後に死亡した米国人学生オットー・ワームビアさんの両親は、セミナーに出席し、北朝鮮問題に対して意見を述べた。ワームビアさんの母親は初めての公式発言で、北朝鮮金政権を「絶対悪」と批判した。

大学生だったオットー・ワームビアさんは2015年末、北朝鮮を旅行中に拘束された。2017年、昏睡状態で釈放され米国に帰国したが、翌日に死亡した。

母親シンディー・ワームビアーさんはセミナーで金正恩委員長を残忍な独裁者と呼び、「彼の国の人々にとっても敵である」と述べた。

「まったく真実を言わない人々と、どうやって外交ができるというのか。信用できない、彼らは嘘しか言わない」シンディーさんは付け加えた。

オットー・ワームビアさんの両親は2018年4月、息子の死は金正恩政権による容赦ない拷問によるものとして、賠償請求し、北朝鮮を提訴した。ワシントンDC連邦地裁は、同年末、北朝鮮に対して5億100万ドル(約552億円)の支払いを命じた。

シンディーさんは、北朝鮮がオットーさんの医療費2億円をトランプ大統領に請求したとの報道に言及した。シンディーさんは、この報道内容について否定した。大統領は4月、いかなる支払いもしていないと述べた。

「彼らは要求できるところから、何でも要求してくる。人間の尊厳に欠けている」と厳しく批判した。

日本から拉致被害者家族も出席

北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさんの実弟の拓也さんはパネルディスカッションに登壇し、13歳だった姉の拉致当時のことを語った。拓也さんが脱北者から聞いた話では、めぐみさんは、新潟から北朝鮮に向かう工作船の船底に閉じ込められて、「お母さん、助けて」と泣き叫んでいたという。拘留先では、壁をかきむしったために指先が傷だらけだったと聞いていると述べた。

横田拓也さんは、国際的な協力の元で、北朝鮮に圧力を掛け、拉致被害者の奪還と人権問題の解決を望むと述べた。

拉致被害者・田口八重子さんの息子の飯塚耕一郎さんもパネルに参加。八重子さんが北朝鮮に拉致された当時、耕一郎さんは1歳だった。2002年、北朝鮮は八重子さんが「交通事故で死亡した」と報告してきたが、のちに虚偽の資料であったことが日本政府の調査でわかった。耕一郎さんは、「北朝鮮は話をでっちあげ、母の存在をなかったものにし、拉致もなかったことにしようとしているのではないか」と述べた。

同日のパネルディスカッションでは、マイク・ペンス米副大統領補佐官トム・ローズ氏は、トランプ大統領政権は、過去2回の両首脳会談で、金正恩氏と人権問題に関して「強調して直接的な」話をしたと述べた。ローズ氏によると、ペンス副大統領は最近、脱北者と面会したという。

ローズ氏は、拉致を含む人権問題が解決されなければ、平和はあり得ないと述べた。「トランプ大統領およびペンス副大統領は関わっている」として、北朝鮮による被害者たちの活動は「政権が正しい道を歩むための後押しとなっている」と支持した。

民主党の外交上級補佐で米上院外交委員会委員マイケル・シファー氏は、米議会ではこの北朝鮮人権問題に取り組み、金政権を「悪と規定する」ための努力の決意があると述べた。

公共政策シンクタンク・アメリカンエンタープライズ研究所(AEI)のニコラス・エバスタッド氏は冒頭講演で、拉致問題は、北朝鮮や韓国、日本だけの問題ではなく、世界中の無実の人々が犠牲になる国家的犯罪だと強調した。

(編集・佐渡道世)

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