5月8日、バンクーバーの裁判所に出廷するため、自宅をでる中国大手情報機器メーカー・華為科技(ファーウェイ)CFOの孟晩舟氏(Getty Images)

在中カナダ人に2例目の死刑判決、ファーウェイCFOは14億豪邸に引っ越し

中国広東省の江門市中級人民法院(地裁)は4月30日、覚醒剤を密造したなどとして薬物製造・販売罪に問われたカナダ人の被告に死刑判決を言い渡した。昨年12月、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)がカナダのバンクーバーで逮捕された後、中国で死刑判決を言い渡されたカナダ人の被告は2人となった。

2018年末、カナダ当局は米国に協力し、ファーウェイの孟晩舟CFOを、偽装口座で制裁網を迂回してイランと取引したとして、対イラン制裁違反の容疑で逮捕した。

孟氏の逮捕後、カナダ人の元外交官とジャーナリストの2人が拘束された。当局は、数日後にスパイ容疑で拘束していることを明らかにしたが、2人の所在は明らかにされていない。

死刑を言い渡されたもう1人のカナダ人被告は薬物密輸罪に問われ、昨年11月の一審判決で懲役15年を言い渡されたが、わずか2カ月足らず後の今年1月に、差し戻し審で死刑を言い渡された。

相次ぐ死刑判決は中国共産党政権によるカナダへの圧力とみられる。

4億円の自宅から13億円の豪邸へ引っ越し

中国の新華社通信メディアによると、孟晩舟氏と弁護団は8日、バンクーバーの裁判所に出廷した。孟晩舟氏の弁護団は、「逮捕は法的には無効」「政治的な動機によるもの」と主張し、審議の差し止めを求めていくという。

孟氏は、身の安全のために、現在住んでいる4億円の自宅から、13億円の住宅に引っ越しすることを裁判所に要求し、最近認められた。保釈直前に空き巣に入られたことを理由にしている。保釈の条件は、保釈金1千万カナダドルの支払いや、自宅2件は担保にいれること、足首にGPSバンドを装着し、夜間の外出禁止などが科されている。また、海外逃亡を防止するため、パスポートは没収されている。

どんな手法も厭わない 中国共産党の「超限戦」

長らく中国で人権活動を重ねてきた、スウェーデン人のピーター・ダーリン氏は9日、米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答え、「中国がカナダを相手にした外交戦は、度が過ぎている」と批判した。中国当局の目的は、カナダ側の孟晩舟の判決に影響を及ぼすことだとした。

ダーリン氏は長年にわたり、NGO団体の人権活動家として中国で活動してきた。英紙ガーディアンによると2016年、ダーリン氏は、国家安全に危害を加えた疑いで中国当局に逮捕された。ダーリン氏は、中国の人権擁護により逮捕された初の外国人であり、外国人としては初めてテレビ放送の中で自白強要と有罪判決を受けた人物。

ダーリン氏は、中国当局は強迫的な手段で、政治的問題を解決しようとしていることは明らかだと述べた。

ダーリン氏は23日間拘禁され、日夜尋問を受けて眠ることも許されず、夜は電気を付けたままにされた。そのうえ「懺悔書」を書かされ、テレビ自白を強要された。

ダーリン氏は、カナダ人を人質に取るような中国共産党政権は「世界の中心的な大国で絶大な権利がある」という、支配的で傲慢な態度の表れであるとした。同時に、他国を小国とみなしてきたが、パワーバランスが中国の比重が強まるにつれ、他国が同地の法律と政治制度ではなく、中国ルールに従うよう強迫的に要求するようになっている、と語った。

米大学でも教鞭をとる学者で、中国の元人権弁護士・藤彪氏は9日、VOAに対して、「中国では、司法制度は共産党によって統制されている。特に、政治的に都合の悪い事案は、既存の司法手続きに全く従わない」と語った。

藤彪氏によれば、カナダ人の死刑判決は、カナダ当局による孟晩舟氏の扱いに合わせて変化する可能性が十分あるという。「カナダ人の命を政治カードにすることは、人権の侮辱のみならず、司法制度を踏みにじる行為だ」と藤彪氏は述べた。

一方、ロイター通信によると、米検察当局は10日、ニューヨーク州の連邦地裁に、孟氏の裁判を担当するジェームス・コール弁護士は過去の経歴から、利益相反が生じるため、法定代理人を務める資格はないと申し立てた。コール氏はオバマ政権時代に司法副長官を務めた。

申し立て文書の写しによると、検察側は「コール氏が司法副長官時代に入手した機密扱いの情報を利用して、ファーウェイの弁護における戦略を進展させる可能性がある」と指摘している。

(翻訳編集・佐渡道世)

関連記事
中国で火災頻発。「給料を支払ってもらえない労働者による放火」と伝えられることも多い?
またもおから工事(手抜き工事)?学校教室の天井が崩落、その時生徒は?
中国は武器輸出を通じて地政学的影響力を拡大しているが、米国は、ウクライナへの武器輸出阻止や先端技術のアクセス制限を通じ、中国の軍需産業に圧力をかけている。世界の武器市場における競争は一層激化している。圧倒的な首位を維持する米国と、追い上げを図る中国。その行方を探る。