息絶え絶えの男性、顔に大やけどの女性 法輪功迫害の内部映像を公開=米FOXニュース
2018年、中国遼寧省本溪の病院のベッドで、昏睡状態にある胡國艦さん(48)は、死の時を迎えようとしている。傍らには、号泣する妻。ひん死の状態にあるにもかかわらず、足には太い鎖がかけられている。胡さんは十数年あまりの収監を強いられた法輪功学習者で、その後、拷問によるダメージで死亡した。
これは、米大手メディアネットワークFOXの地方支局「FOX11ロサンゼルス」が5月20日、中国国内における法輪功学習者に対する人道犯罪を報道した時の番組の一部。番組は、厳しい情報統制が敷かれる中国本土の収容所や病院内部で撮られた映像を公開した。映像は今年1月、中国から米国へ渡った元実業家の法輪功学習者によって提供された。
FOX11の記者ビル・メルキン氏は、残忍な映像に慣れているジャーナリストでさえ、この映像は、堪えがたいものだったと述べた。しかし、「これが真実である」として放送に至った。
骨の形があらわになりげっそりとやつれた男女、拷問で2年間の意識不明に陥り絶命する男性、棒状スタンガンを押し付けられて顔の皮膚が焦がされた女性―。番組が伝えた中国共産党による非人道的犯罪は、視聴者に衝撃を与えた。
映像を見た人々はSNSに、「信じがたい、悪魔のような残忍さだ」「なぜこれほどまで残虐な政権が21世紀に存在しているのか?」「人類史上最もおぞましい犯罪だ」と書き込んだ。
法輪功は、90年代後半に人気を博した中国の気功修煉法。中国体育局は1998年、7000万人を超える学習者がいると推計した。FOX11は番組で、法輪功の広がりと迫害の実態を、内部映像を織り込んで報じた。
5月20日に放送された「姉の救い」と題する番組は、主にある姉妹の境遇に焦点を当てた。
王易非さんと、長春農民銀行の行員だった姉の可非さんは2001年1月、当局による法輪功への迫害に反対し、陳情のために北京の天安門へ出かけた。「真善忍」の言葉が書かれた横断幕を広げたとたん、2人は警官により別々の拘留所に連行された。易非さんは、迫害に同情的な看守の助けを得て、脱出に成功した。しかし、拘留から4カ月後、長春の女性収監所から家族の元に、可非さんは「心臓発作で死亡した」との通知が届いた。家族は、健康的な34歳の可非さんが突然死するはずはなく、拷問により死亡したと考えている。
妹の王易非さんはその後、カリフォルニアに移住したが、「突然死」したという姉の遺体を返却するよう、家族は中国の収監所に訴え続けている。
2015年、易非さんの夫が一時帰国し、可非さんの遺体を返却するよう女性収監所の責任者に迫る様子を秘密裏に撮影した。責任者は「家族が『自然死』と認めなければ、返すことはできない」と拒んだ。
持ち出しに成功した内部映像
番組が放送した迫害の場面は、遼寧省瀋陽の企業家だった于溟さんが撮影したもの。
100人ほどを雇用するアパレル工場を営んでいた于さんだったが、弾圧開始後の2000年、すべての仕事を失い、倒産に追いやられた。于さんもまた、共産党の労働教養所で12年間収容され、スタンガンや極小の鉄格子の檻に入れられるなどの拷問を受けて、命を落としかけた。
于さんは、自分のみならず、多くの法輪功学習者が惨い迫害の犠牲者になっていることを知り、ピンホールカメラを使って収容所内部を撮影した。映像は、北京オリンピックが開催される2008年、多数の法輪功学習者が施設内で、強制労働を強いられている様子を映している。海外輸出用の商品もここで作られている。
「この映像の存在が知られてしまえば、私は間違いなく、殺されていた」。持ち出された内部映像により「残忍な迫害が公になり、一刻も早く弾圧が停止することを望んでいる」と語った。
2019年1月27日、于さんはタイを経由して米サンフランシスコに到着した。迫害の状況の証拠となる機密映像を、公に報道してくれるメディアを探したところ、FOX11ロサンゼルスが編集・放送した。
于さんがFOX11に提供した映像によれば、収容所の法輪功学習者たちは、毎日長時間の作業を強いられ、ノルマが達成するまで休むことを許されない。睡眠は作業机の下の床で、ただ横になるだけだった。
別の映像はまた、息も絶え絶えにベッドに横たわる複数の男性の姿を映している。こうした生命の危機にあるなかでも、彼らの身体は手錠などで縛られており、身の自由を制御されている。
なぜ法輪功は迫害されているのか―。FOX11スタジオ司会者の質問に、記者メルキン氏は答えた。法輪功は静かで平和的な精神修養。共産党イデオロギーが統制できない思想を持つ学習者の拡大に、共産党は体制維持の脅威を覚え、迫害に踏み切ったと考えられる。法輪功の修煉は、中国政府高官にも広がっていた、と伝えている。
法輪功の迫害情報を伝えるウェブサイト・明慧ネットによれば、1999年7月20日、当時の江沢民中国国家主席の命令で、「身も心も殲滅(せんめつ)させる」のスローガンを掲げる弾圧が始まった。身元が確認できただけで、4304人が迫害で死亡した。
法輪功弾圧から20年。明慧ネットの情報によれば、「真、善、忍」を基準に修煉する数百万人の学習者が、裁判なしの長期拘束、弁護士不在の有罪判決、拷問による虐待、また子どもが学校から追い出されたり、家族や親戚、法輪功を支持する友人が嫌がらせなどを受けたりしている。
中国共産党政府の法輪功に対する深刻な迫害は、今もなお続いている。
(編集・佐渡道世)