ドイツで行われた、中国臓器収奪問題についての周知目的のデモンストレーション(GettyImages)

移植専門誌、中国の臓器研究に関する7論文取り下げ 臓器の出所不明

中国では良心の囚人から臓器を強制的に摘出し、臓器移植に使用しているとの独立調査の結果を受けて、国際的な英字医療誌は最近、中国の臓器研究に関して取り下げる意向を示している。

世界保健機関(WHO)と世界医師会(WMA)は研究のために、出所の分からない臓器や死刑囚の臓器の使用は認めていない。他の医療専門誌も、これらの臓器を使用した研究の掲載を禁止する方針である。

オーストラリアのシドニーにあるマッコーリー大学倫理学者ウィンディ・ロジャース氏は共同チームで、中国で出所不明の臓器を使った研究が、国際的な学術文献の中にどの程度あるのかを調査した。

ロジャース氏は、民衆法廷に中国の臓器強制摘出問題を取り上げるよう提案した国際倫理組織「中国での臓器移植濫用停止国際ネットワーク(ETAC)」の国際諮問委員会議長。

2019年2月、医療誌「BMJオープン」に発表されたロジャース氏の報告によると、2000年1月から2017年4月の間、中国の臓器移植に関する全445論文には、8万5477件の移植手術が含まれる。しかし、全論文の99%は、ドナーの同意を得ているかどうかに関する記述がなかった。

この調査結果を受けて、中国の臓器研究に関する論文を取り下げる動きがある。

権威ある移植専門誌「臓器移植」は6月5日、「BMJオープン」誌が名指しした5つの論文を含む9つの移植研究に関する調査をした。そのうち7つの論文は、臓器の出所はおろか、作者、研究機関さえも明白ではなかった。「臓器移植」編集長ジェレミー・チャップマン氏は、最新号8月号で、同7論文を取り下げることを発表する。

ロジャース氏の調査対象の1つとなった、出所に関する情報のない15の論文を掲載していた医療誌「PloS ONE」は、「不明な臓器の出所を調査中」だという。「倫理基準が満たされていないことが明らかになれば、論文は撤回する」と編集長ジョグ・ハーバー氏は「ネイチャー」誌の取材に答えた。

別の医療誌「肝移植」も、臓器の出所不明な12の論文を掲載していた。広報担当は、死刑囚臓器の利用が明らかになれば、論文は撤回すると述べた。医療誌「Springer Nature」も、懸念されている臓器移植に関する論文を調査しているという。

臓器の自発的な提供者、毎年安定的に著しく増加 専門家「考えられない」

中国研究者で米非営利組織「共産主義犠牲者財団」所属のマシュー・ロバートソン氏は、科学誌「SocArXiv」で、2010~16年までに行われた、中国の「自発的な臓器提供者」についての調査を論文にまとめた。

その結果、中国の臓器分配システムやドナー登録者を試算して、「自発的な臓器提供者が毎年、著しく、順調に安定的に増加することは考えられない」と結論付けた。

この発表に関して、ボストンのマサチューセッツ総合病院の外科医で、元・世界臓器移植協会国際事務局長フランシス・デルモニコ氏は反論する。ロバートソン氏の論文はデータ分析に過ぎず、直接的な証拠は示されていないとした。

デルモニコ医師は現在、WHOの「人間の臓器と組織の献血と移植に関するタスクフォース」議長であり、中国での臓器提供改革を10年以上にわたって支援してきた。

2019年6月17日、人道問題に関して独立した裁定を下すロンドン民衆法廷は、中国の臓器強制収奪について、「長らく相当な規模で」行われており、その主な犠牲者は法輪功学習者で、拘束されているウイグル族は、定期的な身体検査を受けていることから、次なる臓器強制摘出のリスクが高いと指摘した。

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