米、中国の学術スパイ取り締まり強化 米国人も対象

米トランプ政権は中国共産党政権による学術界への浸透に追及の手を強めている。その対象は中国系住民から米国人まで拡大した。

米名門エモリー大学は5月、23年間在職していた中国出身米国籍の李暁江と李世華両氏の研究室を閉鎖し、両氏を解雇した。同研究室に所属する数人の中国人研究者も同時に解雇され、30日以内に中国への帰国を命じられた。

夫婦でもある2人は遺伝子編集技術を使用したハンチントン病治療研究の権威的存在で、2008年、世界初の遺伝子組み換えハンチントン病モデルサルの構築に成功し、2010年に別の研究者と初めて遺伝子組み換えハンチントン病・モデル豚を構築した。

2人の研究プロジェクトは米国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)からの資金提供を受けていた。

解雇の理由は、外国政府からの資金提供の隠蔽、技術の海外移転などの疑いがあるという。

李暁江氏は中国当局が支援する海外ハイレベル研究者リクルート計画「千人計画」に参加している。同氏は2008年、華中科技大学の客員教授に就任した。

2人は、エモリー大学で完成させた医学研究成果を、中国の研究機関や大学に渡したとされている。

2018年、中国は「世界初のハンチントン病遺伝子ノックイン豚が中国で誕生」と発表した。同年3月30日付の「中国科学報」ネット版によると、同成果は「曁南大学・粤港澳(広東・香港・マカオ)中枢神経再生研究院の教授である李暁江研究チーム、中国科学院広州生物医薬・健康研究院の研究員である頼良学研究チーム、アメリカ・エモリー大学(Emory University)教授である李世華研究チームなどの複数の研究チームによる共同研究により生まれた」という。両研究者がプロジェクトの中心的な存在であることが分かった。

国立衛生研究所(NIH)は最近、同所が資金提供した米国の数十の大学および研究機関に対して、所属する教員や研究者の外国政府や企業との関係について調査するよう通知を出した。エモリー大学もその一つに含まれる。

米国連邦捜査局(FBI)は、中国政府が米国の学術界に侵入し、米国の知的財産権を盗み、米国の国家安全保障に脅威を及ぼす可能性があることを繰り返し警告している。

2018年、連邦捜査局(FBI)クリストファー・ライ(Christopher Wray)長官は上院情報委員会の公聴会に出席し、中国政府は教授、科学者、学生を大学キャンパスで情報収集家として活動させるために利用していると語った。

今年7月23日米上院司法委員会でも、中国の諜報は深刻な脅威と形容した。米大学に対して、知的財産の取り扱いについて慎重になるよう求めた。長官によると、FBIが抱える1000件以上の知的財産窃盗に関する捜査は、ほとんど中国関連の事案だという。

外国人学生に全額奨学金を提供する中国名門大

FBIはまた、中国当局は外国人学生をスパイに仕立てていると疑っている。米公共ラジオ(NPR)の最近の報道によると、FBIが北京大学の修士プログラム燕京学堂を卒業した5人の米国人に接触し、プログラムの詳細と中国のためのスパイ行為があったかどうかについて質問したという。

同プログラムは「国際的な視点から、オープンで先端的な学術研究の推進と人材育成」を目的として2014年に開設された。全額奨学金制で、一年後China Studies(中国学)の修士号が授与される。定員125人のうち、その30%は米国人またはカナダ人だという。毎年、世界中から応募者が殺到している。

また、同様のプログラムは中国の名門、清華大学にも設置されている。米投資会社ブラックストーン・グループの最高経営責任者(CEO)、スティーブン・シュワルツマン氏が2013年、5億7500万ドルを投じ「シュワルツマン学院」を設立した。

これらのプロジェクトはかつて、米国の優秀な人材が中国との学術的な接触を通じて、相互の信頼関係を築くのに役立つと考えられていた。NPRによると、現在FBIは、中国のこのような取り組みが米国の安全保障と情報部門に脅威をもたらしていると認識している。

(翻訳編集・佐渡道世)

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