8月29日未明、中国当局は軍の香港駐留部隊の交代として、装甲車などを香港に入境させた(Billy H.C. Kwok/Getty Images)

中国軍の進入 当局が威嚇強化か 市民「香港人は引き下がらない」

香港市民は、香港政府と中国当局の強硬姿勢に対して、不満と反発が一層高まっている。香港人時事評論家と市民は、中国当局が武力鎮圧をちらつかせている中、より多くの市民は引き続き8月31日に予定されている抗議活動に参加するとした。

香港の林鄭月娥・行政長官は27日の記者会見で、「緊急状況規則条例」の発動に言及した。同条例は、香港政府が抗議デモについて「緊急事態」と判断すれば、立法会(議会)の承認なしに、デモ、通信、経済活動、人の移動などを制限できると定めている。これに呼応して、中国当局は29日未明、軍の香港駐留部隊の交代を行った。中国軍の大型トラックや装甲車などの車列が、香港警察の護衛の下で、主要道路の観塘道、大潭道、沙田などを走っているのが目撃された。中国当局は香港の抗議活動をけん制する狙いがあるとみられる。

民主派団体「民間人権陣線(民陣)」は31日の集会とデモ行進を警察に申請したが、許可されなかった。

29日、警察の決定に対して法的に争う姿勢を示した民陣の召集人、岑子傑氏と、7月27日の抗議デモ発起人の鍾健平氏はそれぞれ鉄パイプなどで襲撃された。香港市民の間で怒りが高まった。

銀行家で時事評論家の呉明徳氏は、香港政府や中国当局の動き、および岑氏らへの襲撃事件は「いずれも香港市民に恐怖感を与え、抗議者を牽制する意図がある」と述べた。

同氏によると、「緊急状況規則条例」は英植民地時代に策定された。「同条例が発動されれば、香港は『逃亡犯条例』改正案の10倍以上の打撃を受けるだろう。この条例では行政長官の権限で、鉄道や空港が閉鎖され、報道機関の取り締まり強化も可能だ。西側企業が資金を引き揚げるだけでなく、最悪な場合、香港における法治、人権、自由などの基本的な価値観も破壊されるだろう」

呉氏は、中国当局の圧力と脅しに香港市民は折れることなく、「逆により多くの人が街に出て、平和的、理性的に非暴力の抗議活動を続けていく」と語った。

中国軍の動きについて、香港市民でエンジニアの李氏は「混乱で香港の株市場と不動産市場は急落するだろう。でも、香港人は絶対に屈服しない」と話した。中学1年生の張さんは「(弾圧されるのは)怖いが、でも私たち学生は引き下がらない。香港は私たちの家だから守らないといけない」と語った。

ジャーナリストの游清源氏は、中国共産党政権の成立70周年にあたる10月1日まで、香港政府と香港市民の衝突は一段と激化すると指摘した。同氏は、林鄭長官が「緊急状況規則条例」を発動しても市民の抗議活動を抑えきれなかった場合、「中国当局は林鄭氏を失脚させ、代わりに新しい長官の人事を決めるだろう」との見方を示した。

(記者・梁珍、翻訳編集・張哲)

関連記事
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]
上川陽子外務大臣は、パナマ在留邦人及び進出日系企業関係者と昼食会を実施した。日・パナマ間の経済分野における協力の可能性や課題、教育などについて、意見交換を行った。