密猟者に立ち向かう元海兵隊員
密猟はアフリカで深刻な問題に発展しています。貴重な野生動物の命が失われることに加え、その利益が犯罪組織の資金源になっているのが現状です。
ライアン・テートという海兵隊員はこの悲惨な現状を目の当たりにし、密漁に対して行動を起こす必要性を感じました。
ライアンは米国ジョージア州に生まれ、16歳の時に起きた9/11事件をきっかけに海兵隊員になることを決意します。5年間海軍で働いた後、彼は米国務省で勤務し始めます。しかし満たされない気持ちに悩まされる日々を送っていました。
そんなある日、ライアンは野生動物のドキュメンタリー番組に目を奪われます。そこでは密猟者によって首を切り落とされて放置された象の姿や、顔を切り落とされたサイの姿が映っていたのです。その悲惨な現状を目の当たりにして、ライアンは衝撃を受けます。
ライアンは2014年に米国務省を離れ、VETPAWという非営利団体を立ち上げました。彼と他の退役軍人は、海軍で学んだ技術を元に、地元のレンジャーたちを訓練することに着手します。戦闘スキルだけでなく、作戦の立て方、リーダーシップスキルなど徹底的に教え込みました。最大の難関は土地の大きさでした。25万ヘクタールもの大きさの場所を、10~20人のレンジャーだけで見張らなければいけなかったからです。
しかしライアンと仲間たちは、地図や過去のデータを元に、密猟者が現れる可能性が最も高い場所を分析することで、密猟者を効果的に捕獲しました。
その後、ライアンたちは密猟者たちに対する対策を立てることができるようにタンザニア政府を支援します。これにより密猟者や犯罪組織に関与していた大物たちを大勢逮捕しました。その他にもサイを安全な領域に避難させる活動にも取り組んでいます。
VETPAWやレンジャーたちの目的は、野生動物の保護だけでなく、犯罪組織やそこから利益を得ている人々へ渡る資金を断つことです。アフリカの多くの国々は観光産業から利益を受けています。そのため、野生動物が減少すると、観光産業にも支障が出ます。そしてゆくゆくは各国で内乱が起こる危険性もあるのです。
こうした活動の中、ライアンは自分自身も動物たちに救われたと認めています。彼は戦場で経験したトラウマ的体験をいつしか自分の心の中に閉じ込めてしまっていたようです。しかしあの殺されたサイの映像を見た瞬間、それが解放され、結果的に自分の中の負の感情と向き合うことができたのだと彼は述べています。
(大紀元日本ウェブ編集部)