10月5日、香港緊急条例の発動の後、マスクを付けてデモ行進に参加する人々(GettyImages)

香港、緊急条例の発動 専門家「力で抑え込むしか方法を知らず」

香港政府は、議会決議を不要とする緊急条例を発動した。専門家は、今後、当局はメディアやインターネットの情報規制のほか、警察による市民の大規模な逮捕・拘留、私財没収など、あらゆる側面で全体主義的な管理が強化される可能性があると考えている。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は4日、公共利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を発動した。その初めの法律として、公共の場で顔を覆面でおおうことを禁止する「覆面禁止法」を5日から施行するとした。

同法発表の後、抗議者たちの香港政府に対する不信任感は一層強まり、香港各地では5、6日の週末、大型抗議デモが展開している。ほとんどの抗議者たちはマスクを付けている。

緊急条例が発動されるのは、返還以来初めて。この法律の発動後は、行政長官及び香港政府は公共利益の保護のために、出版物、地図、写真、通信の管理と検査に規制を設けることができる。また、香港島への輸送貨物のコントロールも可能になる。

林鄭長官は4日の記者会見で「覆面の着用により(抗議者の)暴力がエスカレートしている」「暴力を終わらせ、法治を取り戻す」と覆面禁止法の正当性を主張した。4カ月に及ぶ反中国共産党、反香港政府デモに参加する抗議者は、身元の特定を回避したり、催涙ガスの影響を緩和するために、マスクを着用している。

抗議者間によるインターネットの集団交流では、中国共産党が実施する情報統制「金盾」が導入されるのではないかと伝達されている。「ネット利用ができるうちに早く検閲回避ソフト(VPN)を導入したほうがいいでしょう」一人のユーザは呼び掛けた。

香港政党・香港衆志(デモシスト)メンバーの周庭(アグネス・チョウ)さんは4日、緊急条例の発動により、「政府は多くの制限や弾圧を加えることができます」と書き込んだ。

最後の香港緊急法 皮肉にも共産主義排斥のため

皮肉なことに、最後に香港で緊急条例が発動されたのは、共産主義者を排斥するためだった。英国統治下の1967年、香港警察は左翼新聞や教育機関を閉鎖し、中国共産党が支援する活動家を逮捕し、本土に強制送還した。米議会支援の放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、当時、左翼は自家製爆弾を使い、子どもを含む数百の人々を殺害し、反左翼の言論者を焼死させた。

香港大学の法律講師エリック・チャン氏は、RFAに対して、覆面禁止法は緊急条例の「先例となり、多くの立法プロセスを踏まずに、政府の都合で法律が自由に変えられる状態になった」と述べた。「人々は銀行から出金に急ぐだろう。今後、政府は外国為替市場も管理するようになる」と推測した。

政治評論家・胡少江(フー シャオ ジィアン)氏はRFAに対して、香港政府の緊急条例の発動は、中国共産党が、香港がこれ以上、制御不能になることを恐れているためだと述べた。北京当局は、林鄭長官の強硬ではない態度に不満を抱いていたという。「全体主義政府は、人々を抑圧するために武力を行使する方法しか知らない」と胡氏は述べた。「彼らは決して国民を理解せず、支持を失った。このため、力で大衆を支配しようとしている」

香港の民主派の立法議会議員24人は5日、高等裁判所に、「覆面禁止法」の暫定的な差止命令を申請した。さらに同法の実施の停止、および香港政府が引用した「緊急法」の司法審査を要求した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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