中国DJIのドローン(GettyImages)

米下院委、特定国からのドローン購入禁止法案を可決 中国DJIのリスク念頭 

米下院の国土安全保障委員会は10月23日、「ドローンによる安全保障強化法」(H.R.4753)を全会一致で可決した。北米シェア8割に及ぶとされる、中国の無人機大手DJI大疆創新科技、Da-Jiang Innovations)のドローンを念頭にしている。

この法案は、国土安全保障省が特定の国から無人航空機システム(UAS)を調達、財政支援、契約締結と更新することを禁じる。対象国は、2018年国防総省の米国国防戦略概説で指摘した「戦略的競争相手」を指す。中国、ロシア、北朝鮮、イランを挙げている。

「法案は、米国のドローン技術が中国の影響を受けないようにするためのものだ。重要な国家安全保障の機器では、中国の技術が信頼に値しないことが何度も実証されている」と立案者ダン・クルーシャル(Dan Crenshaw)議員は説明している。ほかに、マイク・ロジャース(Mike Rogers)議員、ソチール・トーレ・スモール(Xochitl Torres Small)議員が法案作成に関わった。この法案は下院議会投票に移る。

いっぽう上院の国土安全保障委員会でも、9月18日に「米国の安全保障とドローン」(S.2502)が提出されている。同法案では、政府部門および傘下機関が、国の安全保障にとって脅威とみなされている国が製造または組み立てをした市販の無人機、または小型無人航空機システム(UAS)を購入することを禁止する。

「中国は私たちの技術と知的財産を盗んでいる。しかも、米国政府はドローンのような重要な技術を、中国から購入し続けている」法案作成者リック・スコット(Rick Scott)議員は、自身の公式サイトの声明に書いた。

スコット議員のほか、マルコ・ルビオ(Marco Rubio)議員、トム・コットン(Tom Cotton)議員、ジョシュ・ホーリー(Josh Hawley)議員、クリス・マーフィー(Chris Murphy)議員、リチャード・ブルーメンタール(Richard Blumenthal)議員が立案者として名を連ねた。

「ドローンは私たちの未来に関わる技術だ。議会の行動がなければ、中国やイランのような敵対的国はこの技術を小さなスパイとして使用して、政府、重要インフラ、さらには病院や個人宅をも偵察するだろう」と、ブルーメンタール議員は法案についての見解を公表した。

また、この法案は、政府部門におけるドローンの使用禁止のみならず、ドローンの購入に政府が資金を助成することを禁止する。政府の問責事務所の長官は、連邦政府の各省庁が保有するドローンの購入量を詳述した報告書を議会に提出する必要があるとした。そして、連邦当局は、法案の制定後180日以内にこれらの無人機の使用を停止することを定めている。

「中国企業は定期的に情報を盗み、北京の軍事および情報機関に収集したデータを提供している。そして、国土安全保障省もまた最近、中国製の無人航空機システムおよび機器がもたらす脅威について警告している」とルビオ議員は声明で述べた。

5月、国土安全保障省は、中国製の無人機に関するあらゆる業種に対して警告文書を送付し、ドローンが収集したデータが、情報漏洩のリスクにさらされる可能性があるとした。

内務省は、山地の消火活動の支援、ダムと航空機事故の検査とマッピング、火山活動の監視などのミッションで、非軍事ドローンを頻繁に使用している。しかし、いずれのメーカーのドローンを利用しているかは公表されていない。

内務省のドローンの使用に関する2019年7月の報告書によると、9つの局(国立公園局とその中の米国地質調査局)では、2018年に米国の42州および準州で1万342回のドローン飛行を実施した。

中国DJIのドローンは、世界市場で独り勝ちしている。調査会社スカイロジック(Skylogic)による2018年の市場報告によると、カナダと米国で営業している商用ドローンの79%がDJIによって運用されている。国際市場では、DJIのシェアは74%だった。

米国の地方自治体もDJIのドローンに依存している。バードカレッジのドローン研究センターが発表した2018年の報告によると、米国の少なくとも910地方自治体および地方の警察、保安官、消防、および緊急サービス機関がドローンを使用し、うち523の自治体は、少なくとも1台以上のDJIのドローンを使用している。その情報は、地元のニュースレポート、FAA航空機規制などの公式記録、自治体の議事録や出版物のデータの拠点となる。

米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカは9月17日、政府の公式文書を引用して、米海軍が2018年8月から11月まで、DJIのドローンに約19万ドル、空軍で5万ドル相当を購入した。両機関は、この購入についての詳細を明らかにしていない。

中国深センで2006年に創業した民間企業DJIは、深セン市政府から数億円規模の巨額補助金を受けている。

8月26日、米国防次官(取得・維持担当)エレン・ロード(Ellen Lord)氏は国防総省で開かれた記者会見で、米国のドローン市場について「安価な中国製品によって侵食されているため、米国のドローン製造産業を構築する必要性がある」と語った。ロード氏は、中国製ドローンにより「多くの情報が中国に送られることを知っている。このため、私たち(米国)が使用できるものではない」

(フランク・ファン/翻訳編集・佐渡道世)

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