トイレから入浴まで厳格監視 新疆収容所管理の機密文書がリーク

絶対に逃亡は許さない、真に変化するまで指導するー。メディアの連合組織が入手した中国の機密文書には、新疆ウイグル自治区の強制収容所運営について詳細な運用マニュアルが書かれていた。ポイント制で収監者を管理し、トイレから睡眠まで厳格な監視の中で生活するなど、中国当局が主張する「職業訓練センター」には相応しくない非人道的な人の管理が行われていることが明らかになった。

14カ国17のメディアが参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は24日、公式サイトで、「自治区国家機関電報」と題された内部文書の内容を伝えた。2017年、当時の新疆地区の公安部門上級官員・朱海論氏が作成したものという。

「トイレから入浴まで」

新疆ウイグル自治区ウルムチ市内を監視する警備員(GettyImages)

中国共産党政権はウイグル族らイスラム教徒が住む新疆で、テロ対策や地域の情勢安定を理由に再教育センターを数十あまり設置している。2017年4月以来、当局により「強い宗教観」と「政治的な誤り」のために逮捕された人は180万人を超えると見られている。日本や米国を含む20数カ国は10月、国連人権理事会で、中国に対して新疆における恣意的な逮捕と拘束を即刻停止するよう求める非難声明を出している。

このほどICIJが報じた中国の公文書によると、当局は各収容施設の責任者に対して「授業中、食事中、トイレ休憩、入浴時間、医療措置、家族との面会など、生徒の行動を厳密に管理する」よう指示を出している。また、病気やその他の理由で出所しなければならない人は誰でも「特別な同行者を派遣し、監視したり、コントロールしたりする」よう要求している。

収容施設側は、「生徒のイデオロギー的な問題や異常な感情を常に観察し、解決する」よう指示されている。また、拘束されている人から携帯電話を押収して、外部との接触を断たせている。

「寮や教室には死角がないように監視カメラを完全配備し、警備員がリアルタイムで監視し、詳細を記録する。疑わしい行動を即座に報告できるようにしなければならない」としている。

この文書によると、施設側は囚われた人々に中国語、中国国内法、職業技能を毎日チェックしている。人々の教化の一環として「思想の指導」を厳密に行うと同時に、細かな「日常生活の行動規範」を強化するよう指示している。 「起床、点呼、洗濯、トイレへの行き方、整理、清掃、食事、勉強、睡眠、ドアの閉め方」など。

所内の人々は「生徒」と呼ばれ、「成績」を図るためにポイント制度に応じて「等級」分けされている。「毎月および年間の合計スコアを計算して学校のファイルに記録する」と文書には書かれている。

「生徒のスコアを教育とトレーニングの有効性を測定するための基本的な基準とし、それを報酬、罰、および家族の訪問に直接リンクする。レベル管理を行い、スコアに従って治療を差別化し、生徒が管理に従い、真剣に勉強し、真に変化するよう奨励する」

各収容所では、スコアに応じた釈放の基準が設けられているようだが、文書によると「少なくとも1年間は訓練センターで教育され、訓練されることを最低条件」としている。

最後にこの文書は、施設の管理者に対し、記された規則について厳密に扱うよう指示している。

「携帯電話やカメラなどの映像機器を教育施設および管理地域内に持ち込んだり、インターネットにアップロードしたりすることを固く禁じる。関連する重要なデータを集約したり、広めたり、外部に公開したりしてはいけない」

「内部文書、人権侵害の裏付け」ポンペオ長官

今回流出した新疆政策の内部文書は、施設では非人道的な行為があるとの証言を裏付ける証拠となる。中国共産党政権は、「職業訓練」ではなく強制収容を行っている。ポンペオ米国務長官は26日、記者会見でこの文書の内容は「非常に重大な人権侵害の裏付けになる」として、中国を非難した。

英BBCや仏AFPほか主要英字紙、また大紀元の取材に応じた新疆の収監体験者や家族の話によると、新疆の収容施設に拘禁された人々は、政治的教化を受け、日常的に監督者の手による手荒な扱いを受けている。過密状態にある施設で、劣悪な食事や不衛生な状況に置かれている。SNSには、収容所にいる家族の解放を求めるウイグル族の人たちの動画が多数あがっている。

カザフ系のイスラム教徒で、1年余り新疆の収容施設で言語指導係を務めたSayragul Sauytbayさんは2019年10月、海外メディアに対して「忘れることのできない記憶」を語った。施設では女性たちへのレイプが続いており、説明されない薬物の投与、女性避妊具の強制着用などがあったという。Sauytbayさんは家族でスウェーデンに亡命した。

「警備員は頻繁に女性たちをレイプしていた。忘れる事ができないのは、若い女性が200人ほどの収容者の前で服を脱がされ、女性は相次ぎレイプされたこと。警備員たちは監視していて、他の収容者たちがこの行為に怒りの声をあげたり、頭を下げたり、目を閉じたりすると連れ出され、二度と目にすることはなかった」

別の女性で、英BBCパノラマの取材に応じたグルジラさんは、1年3カ月にわたり収容された経験を語った。「女性のトイレは2分以内。急げ急げとせかされる。遅いと電気棒(高圧電流が走る警備用器具)で後頭部を叩かれる。叩かれた後は『先生ありがとうございます、次からは遅れません』と言わなければならない」

新疆の施設内の規則については、11月中旬、中国語のインターネット掲示板に流出した403ページにおよぶ新疆政策に関する公文書のなかに含まれていた。ニューヨーク・タイムズによると、文書をネットに掲載した人物は匿名を希望する中国政府の内部関係者で、北京の指導部がこの新疆政策について説明責任を負うよう求める人物だという。

中国外務省は、ICIJが新疆の内部文書を報じたことについて、定例記者会見で、新疆に強制収容施設があることを否定し、「職業教育訓練センター」があるとの従来の主張を繰り返した。

ワシントン拠点のシンクタンク、共産主義被害者記念基金会の上級顧問アドリアン・ゼン氏は、中国の公文書を分析すると、小さな自治体レベルも含めて新疆の集中管理施設は1000以上あると推計した。

9月、米国務省のジョン・サリバン副長官はニューヨークで開かれた国連総会の関連イベントで、国連は、中国に新疆政策の説明をさせていないと批判した。また、ウイグル族の大量拘束や人権侵害に関する報告を作成するために、国連査察官の自由な立ち入りを求めるべきだと語った。

(翻訳編集・佐渡道世)

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