カンボジア南部の沿岸都市シアヌークビルには中国資本が注がれている。市内のカラオケ・バー周辺にいる中国人居住者たち。2018年12月撮影(GettyImage)

カンボジア、中国人訪問者激増も「収入は減」地元観光協会

アンコールワットなどの世界遺産で有名なカンボジアには2019年、200万人以上の中国人観光客が訪れた。しかし、地元の観光協会はカンボジア人の収入は減少しており、観光の恩恵はほとんどないと嘆いている。

カンボジア観光省は12月17日に発表した報告書で、1~10月にカンボジアを旅行した中国人観光客は前年比24.4%増で204万人に上る。また、海外からの全訪問者数の38.3%を占めると述べた。

観光ではなく、ビジネス目的で訪問する中国人も多い。報告によると、同期間で2018年は93万人、2019年は108万人だった。

報告書によると、アンコールワット仏教寺院群に最も近いシェムリアップ国際空港の利用者が140万人と最も多かった。近年では、プノンペン国際空港、中国投資が著しいシアヌークビルに最も近い、シアヌークビル国際空港への到着が増加した。

訪問者のうち、アンコールワット寺院を訪れる外国人の数は前年比13%減少して180万人、沿岸都市のシアヌークビル地域では、外国人観光客が40%増で100万人だった。

中国国営新華社通信によると、カンボジア観光省大臣は、中国はカンボジアの観光産業にとって「巨大な市場」であると述べた。

大臣は、2018年にカンボジアは620万人の外国人観光客を受け入れ、総収入は43億5000万ドル、観光が国内総生産(GDP)の12.7%に寄与したと述べた。

減る観光収入

しかし、シェムリアップ・アンコール協会のキュエル・シー(Khieu Thy)会長は、米議会系メディアのラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して「ほとんどの人がすでに寺院を訪れた」ため、中国人観光客が大幅に減ったと語った。

「中国人観光客は定期的にコンポンソム市(シアヌークビル国際空港の近く)を訪れるが、アンコールではそれほど多くありません」「昨年と比べて静かだ」と述べた。

キュエル・シー会長は、中国人観光客は団体客であるため、一般に、個人ツアーで来る他国からの観光客よりもカンボジアでの消費が少ないと言う。

「中国人観光客は中華料理店で食事して、中国の店で買い物をする。西洋諸国からの観光客は、常にタクシーに乗り、クメール市場で買い物をしている」

ラオスとミャンマーの観光労働者は、地元企業が彼らから何も得ていないので、中国主導のツアーを「ゼロドルツアー」と呼んでいるという。

近年、中国からシアヌークビルへの投資は著しい。中国本土では、厳しく賭博が禁じられている。そのため、カジノを楽しみたい本土客が多く訪れ、中国資本が注がれた。

街には建設労働者から、食堂、ホテル、商店などを開業する中国人が増加している。現地では、中国電子マネーのアリペイを利用できるが、中国本土に口座を有する者しか使用できないため、カンボジア人との関係は薄い。

カンボジア人は、慣れない中国人のビジネス慣行や不法行為に眉をひそめている。内務省の統計によると、カンボジアの入国管理局は、今年1~9月までに、906人の中国人を中国に強制送還した。ロイター通信によると、6月には中国資本の建設中のビルが倒壊し、17人が死亡する事故が起きている。また、中国人同士のトラブル、暴力沙汰も頻発している。

強制送還された者の一部は中国で経済犯罪に関与し、カンボジアに身を隠していた者だが、他は、カンボジアで違法なオンラインギャンブル、または通信取引詐欺に関与したケースが多い。通信詐欺は主に、中国本土の顧客を対象にしている。

現地紙クメール・タイムズ12月5日付によると、シアヌークビル中心部500カ所には、来年夏までに監視カメラ600台が設置されるという。同沿岸地域では中国人の増加によって、殺人や麻薬取引、違法ギャンブル、恐喝、誘拐などの犯罪が問題になっている。

国家警察によると、カンボジアには25万人の中国人が在住。首都プノンペンとシアヌークビルに各10万人が居住している。

(翻訳編集・佐渡道世)

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