ベンツで紫禁城に乗り入れた女性に批判殺到、「特権の乱用」

中国ではこのほど、外国高級SUV車で北京の故宮博物院(紫禁城)に乗り入れた女性に批判が殺到した。女性は「夫の祖父」が共産党の長老と自称し、中国版ツイッターの「微博」でその贅沢な生活を度々披露していたことから、市民の特権階級への反発が高まっている。

1月17日午後、微博に、ユーザーの「「露小宝LL」」は、「月曜日の閉館日のうちに、人混みを避けて、故宮を楽しんできた」とのコメントを書き込み、写真4枚を付けた。写真には、紫禁城の太和門広場を背景に、2人の女性が黒いベンツ・G500とともに映っていた。また、ベンツG500には「京A80」から始まるナンバープレートがついている。このナンバーは国務院が管理する車に割り当てられているという。

女性の自己紹介欄には、「中国国際航空公司のキャビンアテンダント」と記されている。中国国際航空は声明を出し、女性は元客室乗務員で、2018年に退職したとした。

故宮博物院は数年前に、紫禁城内に自動車で入場するのを禁止したため、インターネット上では女性の行動を批判する声が高まった。

故宮博物院は17日夜、微博を通じて、謝罪声明を発表した。しかし、「「露小宝LL」」がどういう経緯で進入したのかについては言及しなかった。

香港親中派メディア「星島日報」は、「「露小宝LL」」は、中国共産党の長老で何長工氏(故人)の孫の妻だと報じた。何長工氏の息子は元国家観光局長の何光煒氏だ。

この投稿に対して、18日以降中国共産党機関紙「人民日報」をはじめ、国内政府系メディアが次々と評論記事を掲載し、「特権」の乱用だと痛烈な批判を行っている。

中国紙「新京報」は、女性は北京市のオリンピック森林公園に近い高級住宅地の「豪邸」に住んでいると報道した。

国内メディアの「上游新聞」によると、女性は17日夜に微博の投稿をすべて削除した。報道は、「しかし、これまでのコメントをみると、彼女の『ラグジュアリーな消費力』がはっきりとわかる。彼女が過去に投稿した写真には外国高級車、ブランドバッグ、高級腕時計、高級化粧品、さらにプライベートジェット機も映っていた」とした。一部のユーザーは「赤い権貴階級」だとして、当局に対して「2020年第1弾の反腐敗運動を開始せよ」と呼び掛けた。

ネットユーザーの中には「ネット上で裕福さを自慢する人が多くいる」とし、中国政府系メディアが、世論操作のためにこの出来事を利用して意図的に過熱報道をしているとの見方もある。15日に米中両政府が調印した貿易交渉の第1段階合意について、国内では、中国側が大きく譲歩した「喪権辱国(国権を喪失させ国を辱めること)の合意だ」との非難の声がある。中国当局がこの感情を弱めさせ、米中通商協議から国民の目をそらすために、今回、大々的に取り上げた可能性がある。

(翻訳編集・張哲)

 

関連記事
中国大陸でのインフルエンザが猛威を振るい、小児病院は満員状態となり、重症患者が急増している。公式報告がない中、家族や医師がSNSで情報を共有。北京市民の中には原因不明の高熱を訴える声も多く、WHOが情報提供を中国に求める状況に。
2025年の新年を迎え、中共の機関紙は習近平の講話を発表し、「東が昇り、西が降る」と強調した。中国経済が深刻な後退に直面しているにもかかわらず、習近平はこの理念を信じ続けており、ある専門家はプロパガンダと指摘している。
新年早々、古書いわく「王朝滅亡の凶兆」と記載される「赤い空」が中国の複数の都市で再び。
インド、バングラディッシュは中共の巨大ダム建設プロジェクトを懸念している。そうした中、バイデン米大統領はサリバン大統領補佐官のインド訪問について協議した。
コロナが初めて確認されてから5年が経過した現在、中国では新たな呼吸器ウイルス「ヒトメタニューモウイルス」の感染が広がり、パンデミック再来への懸念を引き起こし、周辺諸国や国際メディアの注目を集めている。