【紀元曙光】2020年1月26日

東京JR山手線の新大久保駅。同駅のホーム下、階段通路の壁に黒く光る記念プレートが設置されている。この駅でホームから転落した人を救助するため、危険も顧みず自ら線路に飛び降りた2人の名を刻んだものである。

▼2001年1月26日。今から19年前のこの日、時刻は夜7時すぎであった。当時はまだ、どんなに混雑する駅のホームにも、転落防止の安全柵はほとんど設置されていなかった。

▼新大久保駅は、山手線のなかでも乗降客が多い。朝と同様、この時間も帰宅ラッシュで混んでいた。酒を飲んで足がふらついていた日本人の男性が1人、線路に落ちた。それを目撃した人(おそらく女性)の切り裂くような悲鳴が上がる。電車が迫るその時、2人の勇気ある男性が線路に飛び降りた。

韓国人留学生李秀賢(イ・スヒョン)さん。日本人カメラマン・関根史郎さん。お名前をここに記して、小欄の筆者は、自分の胸の苦しみが落ち着くまで数分待たなければならなかった。続きを書く。

▼2人が飛び降りた次の瞬間、走り込んできた電車にはねられて、3人とも亡くなってしまう。苦しまない即死だったことを喜ぶべきか、筆者には分からない。

▼李秀賢さん、行年26歳。友人の誰からも信頼される、すばらしい青年だったことは疑いない。高麗大学在学中に、校門付近で事故に遭ったお年寄りを抱きかかえて、病院へ運んだこともある。立派なご子息を亡くされた韓国のご両親の悲痛は、今でも察するに余りある。今日の日を、日本の鉄道各駅に設置された安全柵を思いながら、瞑目して、心静かに過ごしたい。

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