一国の歴史を遡上すると、科学だけでは説明しきれない部分が必ずある。最も昔の源流部へ至るには、出土文物や化石が語る考古学と、神話上の人物がリアルに動いている伝承世界との融合が避けられないからだ。
▼中国人は、三皇五帝の神話時代を含めて「中国五千年」だという。日本人が、考古学的な観点から夏王朝までを数えて、「中国は約4000年でしょう」といっても、彼らは頑として聞き入れない。半世紀前には、古いものを完全否定し、狂気のように破壊したくせに、と日本人としては首を傾げてしまう。
▼いや、それでもよい。精神文化とは、ある意味で強い主観の産物であるが、それを支えてきた風土や民族性は客観的実在であり、自家の祖先もまた過去の実在である。「我々は五千年だ」と主張する彼らを、論争の相手にする必要はないだろう。
▼中国がそうならば、日本も、背骨となる精神文化を、いま少し強く意識して持つべきではなかろうか。戦前とは違って、今の日本の学校教科書には、神話的要素が含まれる歴史は記載されていない。もっとも、神話の授業では学校の先生が成績をつけにくかろうが。
▼学校で扱えないならば、どこかで知る機会をもてばよい。初代・神武大帝が即位したのが紀元前660年2月11日。以来、今日まで2680年にわたる歴史を刻んできた日本人は、もちろん大陸から来た渡来人、帰化人も含めてではあるが、皆で一つの国をよくぞ営んできたと誇りにしてよいはずだ。
▼本日は建国記念日。昔は紀元節と呼んだ。五千年には及ばぬが、わが日本も決して短い歴史ではない。
【紀元曙光】2020年2月11日
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