米技術を盗んで作った中国大型旅客機C919 米当局「看過すれば市場を奪われる」と危機感をあらわにした。写真は米国家防諜安全保障センターのウイリアム・エバニーナ局長(GettyImages)

米技術を盗んで作った中国大型旅客機C919 米当局「看過すれば市場奪われる」と危機感

米ワシントンの有力シンクタンク・戦略国際問題研究センター(CSIS)で2月6日、中国のスパイ行為と知的財産窃盗に関しての対抗策を議論する「中国イニシアチブ」の会議が開かれた。米国家防諜安全保障センターのウィリアム・エバニーナ(William Evanina)長官は、中国が国産を自称する大型旅客機C919は、盗まれた米国の技術で作られたと解説した。

エバニーナ長官は、中国初の大型旅客機COMAC C919について、海外企業へのサイバー攻撃を通じて、中国航空業界の技術的難関を突破させ、業界トップの米ボーイング社や欧州エアバス社から市場シェアを奪取することが中国側の狙いだとした。

長官は画像を用いて、C919に使用された海外技術の模倣について指摘した。例えば、タービンエンジンは米仏合弁会社CFMインターナショナルから、補助電源システム、電気システム、および着陸装置は米国電子制御技術ハネウェル(Honeywell)から、燃料システムは米国制御技術老舗パーカー・ハネフィン(Parker Hannifin)から、フライトレコーダーは米電機コングロマリットGE(ゼネラル・エレクトリック)からだという

エバニーナ長官は、中国C919はいくつかの重要な問題が未解決のままであるとした。しかし、このまま中国が技術を盗み続けるのを放置しておけば、今後50年間で、ボーイング社やエアバス社の業界シェアは消失する。米国経済にとって、致命的な打撃になると語気を強めた。

2019年10月14日、米サイバーセキュリティ企業クラウドストライク(CrowdStrike)社は、江蘇国家安全保障局が主導して、C919主要技術のための外国企業技術の窃盗、ハッキング、スパイ活動を担っていると報告した。

江蘇省国家安全保障局は、地下で活動する中国人ハッカーを雇い、ターゲットとなる企業の内部ネットワークを見つけてマルウェア「Sakula」「PlugX」「Winnti」を仕込んでいた。

マルウェア「Sakula」の開発者であり中国当局代理人の兪平安(音訳、Yu Pingan)は、米国司法省ロサンゼルス支局により起訴され、18カ月の懲役刑が下った。中国外務省は「どんなサイバー攻撃にも関与していない」とし、兪の逮捕起訴に抗議していた。

ロイター通信2019年12月によれば、兪は中国に戻り、上海商業学校で「サイバーセキュリティ」の講師に就いている。

クラウドストライク社の報告によると、江蘇国家安全保障局はサイバースパイのほか、伝統的な「人の手によるスパイ」も行っていたという。例えば、ターゲット企業に勤務する中国人技術者や社員に賄賂を渡し、企業ネットワークにマルウェアを仕掛けるよう仕向けていた。米司法省は2018~19年にかけて、少なくとも3人を、民間航空機からの商業秘密盗用の罪で起訴した。

2019年4月、江蘇省国家安全局第6局の副局長徐彥軍(Xu Yanjun)は、米国国防総省の請負企業であるGE傘下子会社、GEアビエーション(GE Aviation)などから、機密情報を不正に入手しようとした。ベルギーで逮捕され、米国に引き渡された。

2018年9月、中国生まれの米軍予備兵季超群(Li Chaoqun)は、航空機エンジンのサプライヤーに関する技術情報を不正に入手し、他者に漏らした疑いで逮捕された。

2018年8月、GE勤務の中国人エンジニアの鄭曉清(Zheng Xiaoqing )は、GEの機密技術文書を盗んだとして逮捕された。いずれも江蘇省国家安全局が関与していたと、報告されている。

(翻訳編集・佐渡道世)

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