中国共産主義青年団は2月中旬にバーチャル・アイドルの企画を発表したが、ネットユーザーの批判を受けて取り下げた。イメージ写真(Nils Petter Nilsson/Ombrello/Getty Images)

中国当局、バーチャルアイドル起用するも大炎上、米紙「プロパガンダの失敗」

中国共産主義青年団(共青団)は2月17日、SNS微博でバーチャル・アイドルの「江山嬌」と「紅旗漫」のデビューを発表し、中国の若者に対して「アイドルに応援コールを送ろう」と呼び掛けた。しかし、ネットユーザーらは「私たちがこの国の主であり、ファンではない」と猛烈に批判した。これを受けて、共青団はバーチャル・アイドルに関する投稿をすべて削除した。海外メディアは、共産党政権の若者向けプロパガンダ工作が失敗したとの見解を示した。

共青団は微博で、アカウント「江山嬌と紅旗漫Official」を開設し、コメントを投稿した。これによると、アイドルの名前は毛沢東の詩に由来すると紹介した。アイドル2人組は中国古代の衣装を身にまとう少女と少年のアニメキャラクターで、姉弟と人物設定をされている。姉が「江山嬌」で、弟が「紅旗漫」。

SNS微博にある共青団のアカウント「江山嬌と紅旗漫Official」(微博より)

共青団がこのアカウントに書き込んだ2件目の投稿で、バーチャル・アイドルの住所を「上海市黄浦区」から「北京市東城区」に変えたことを「史上最速の戸籍変更」と自慢した。

ネットユーザーは、これに対して「笑えないジョークだ」と非難した。中国の厳しい戸籍制度では、他の地方の出身者が北京市の戸籍を獲得するのは難しく、近年、北京市政府は地方出身の出稼ぎ労働者を次々と追い出したからだ。

一部のネットユーザーは、中共肺炎新型肺炎)のまん延で「毎日多くの患者が亡くなっている。第一線にいる医師や看護師らは、防護服が足りない中で命を懸けて医療活動をしていることを知っていますか?(中略)私たちが今必要としているのは物資だ。このような非現実的で若齢化・偶像化された信仰的な存在は要らない」と強くバッシングした。

中国甘粛省政府は2月17日、省内から医療従事者15人を湖北省に派遣すると公表した。省が微博で公開した動画には、15人の女性スタッフが出発する前に、バリカンで髪の毛を剃り落とされ、坊主頭になっていた。髪の毛を直視できない女性や涙する女性の姿が映し出された。

ネットユーザーらは「江山嬌」に向かって、「あなたは祖国のために坊主頭にできるのか」と質問し、不満をぶちまけた。

さらに、「江山嬌、結婚したら、家庭と仕事を両立できるのか?」「江山嬌、二人目を生むのか」「江山嬌、教師からセクハラを受けたら退学させられるのか?」「江山嬌、アイドルになれたのは枕営業したからなのか?」などと皮肉なコメントが殺到した。

共青団の投稿への批判コメントに約10万人のネットユーザーが「いいね」を押し、大炎上となった。最初の書き込みからわずか5時間後、「@江山嬌と紅旗漫Official」はすべての投稿を削除した。プロフィールには「すみません、休みが必要です」と書き残された。

動画共有サイト「bilibili」では、両アイドルの動画も取り下げられた。ネットユーザーは「史上最も短命なバーチャル・アイドルだ」とのコメントを投稿した。

米ボイス・オフ・アメリカ(VOA)19日付は、中国共青団はエンターテインメント性の高いバーチャル・アイドルを利用して、若者に対してプロパガンダを強化する狙いがあると分析する。バーチャル・アイドル企画が撤回されたのは、「中国の若者の間で共青団の信用が失墜したことを反映した」

米紙ニューヨーク・タイムズは26日の報道で、共青団のバーチャル・アイドルは中国当局が若者を抱き込もうとする手段だと分析した。当局は、中共肺炎の感染拡大という政権存亡の危機に直面しており、若者の愛国感情を高める必要がある。

同紙は、バーチャル・アイドルに関する若者の強い反発について、「中国プロパガンダの最大の失敗だ」とした。また、同紙によると、中共肺炎をめぐって、ますます多くの若者が中国当局の虚偽報道に怒り、不信感を強めている。

同紙の取材を受けた上海市民Stephanie Xiaさんは政府を批判する中共肺炎の投稿を転載したため、SNSウィーチャットのアカウントを30日間凍結された。それでも声を上げ続けると述べた。

「勇気を出して声をあげよう。何も言わないよりきっといつか良い結果が得られる」

(翻訳編集・張哲)

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