バイオ兵器、DNA攻撃、脳コントロール 非対称戦に注力する中国軍=米安全保障専門家
非対称戦や非武力の浸透工作など、有事の線引きが分かりにくい現在の戦争形態で、中国軍はハイテク、生物科学などの研究開発に力を入れ、「戦わずして勝つ」戦闘能力を高め続けている。
米国のシンクタンク、新アメリカ安全保障センターの技術・国家安全保障非常勤主任研究員、エルサ・カニア(Elsa B. Kania)氏は、米国防大学ジャーナル「プリズム」に寄稿し、中国が認知科学やバイオテックを研究することによって軍事力を増強し、先駆的技術での優位性を獲得しようとしていると指摘した。
カニア氏によると、90年代以降、中国人民解放軍は情報化戦略を特に重視し、指揮、統治、通信、コンピューター、監視、偵察システム(C4ISR)の開発を成功させ、サイバー戦、電子戦、心理戦における情報作戦能力を高めてきた。
さらに、中国軍は情報戦から人工知能作戦に移行している。認知科学を用いて「脳制御権」と「知能権」を掌握することは、解放軍の重要な発展方向の一つである。
中国軍事科学院軍事医学研究院の呉海濤研究員は2019年8月、人民解放軍の機関紙「解放軍報」の寄稿文で、脳の原理を模倣する脳型知能(Brain-inspired Intelligence Technology)を開発すると発表した。呉氏は、「人工知能分野で飛躍を遂げる新たな手段となり、軍事技術と装備の発展に大きく牽引する」と書いている。
カニア氏によると、中国はこの分野に多くの資源と人材を投資している。例えば、中国国防科学技術大学の認知科学基礎研究チームは、20年以上かけて脳マシン・インターフェースの研究を行い、脳電信号(EEG)を用いたロボット、車両運転、コンピューターの操作を行っている。中国人民解放軍軍事医学科学院の周瑾研究員は、脳科学と神経工学を重点的に研究し、多次元神経情報収集、解析、および知能制御の技術体系を確立させた。
さらに、サルのような非人間的な霊長類の脳認知の研究にも力を入れている。
脳科学のほかには、中国は生物科学の軍事研究を応用して、「バイオテクノロジーの優位性(制生権、Biological Dominance)」の獲得を試みている。2010年、中国第三軍医大学教授の郭継衛氏は『制生権:新時代の軍事戦略の再構築』と題された書籍を発表。郭氏は、バイオテクノロジーが次の軍事革命で重要な役割を果たすと予測した。
中国人民解放軍専門技術少将の賀福初氏もその分野の優れた技術者の一人で、2016年に軍事委科学技術委員会副主任に抜擢された。賀氏は、主に生物医学、生物材料とバイオセンサーなど関連研究をリードしているとされる。
カニア氏はまた、バイオテクノロジーの軍事応用の中で、遺伝子(DNA)攻撃について賛否両論があると指摘する。人民解放軍の軍事戦略学2017版には、新たに「特定人種の遺伝子攻撃」「生物的な抑止」という内容が追加されている。
カニア氏は国防科学技術大学軍事専門家の石海明氏の言葉を引用して「高い致命性、低コスト、多様な方法から、遺伝子攻撃は未来の戦争に大きな影響を及ぼす」 と指摘している。
(翻訳編集・佐渡道世)