2019年12月、国連食糧農業機関(FAO)代表に選出された中国の屈冬玉氏と握手を交わすスペインのペドロ・サンチェス首相(GettyImages)

<国連腐敗>中国、国連の知的財産機関事務所を上海に設置試みる 局長選は落選

国連機関の世界知的所有権機関(WIPO)の次期事務局長選挙が行われ、米国や多くの西側諸国が推薦するシンガポール代表が中国代表を破った。16ある国連専門機関では、4つをすでに中国代表が務めている。米国は国連の中国偏重を強く懸念している。

WIPO調整委員会は3月4日の投票で、シンガポール知的財産局長のダレン・タン氏が55票を得て、28票の中国法務専門家・王彬穎氏を破った。オーストラリアのフランシス・ガリWIPO事務局長を引き継ぐ。

WIPOは、特許や商標登録サービスの企業からの手数料により、大きな収入を得ている。

WIPO開発技術部門副局長のジェームズ・プーリー氏は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、中国は近年、発展途上国で大規模なインフラ投資計画を実行しているため、中国政府は国際機関に対するロビー活動がしやすくなっていると語った。

知的所有権は、米中通商協議でも重要な争点だ。国連の4機関にトップを送り込んでいる中国は、WIPOで5つ目のポストを狙っていた。16ある国連専門機関のうち、国連工業開発機関(UNIDO)に李勇氏、国際電気通信連合(ITU)に趙厚麟氏、国際民間航空機関(ICAO)に柳芳氏、食糧農業機関(FAO)に屈冬玉氏がそれぞれ、事務局長に就任している。

米ホワイトハウスの大統領補佐官(通商担当)で対中強硬派の経済学者ピーター・ナバロ氏は、2月23日、米フィナンシャル・タイムズの寄稿文で、中国は国連の専門機関の支配のために絶えず工作していると述べた。

「中国のWIPO(代表選挙)策略は、国連の16ある専門機関を支配するための戦略の一つだ」とナバロ氏は書いている。他の国はそれぞれの機関で1人ずつしかトップに就いていないのに、中国人が4人もトップにいるのはおかしいとした。また、WIPOを含む7機関でも次長クラスに中国人が就任している。

ナバロ氏は、知的財産の窃盗が問題視されている中国共産党政府の高官が国連機関のトップに就任すれば「恐ろしい誤りになる」と表現した。「中国の知的財産の窃盗により、米国経済は年間2250億~6000億ドルの損害を被っている」と付け加えた。

ナバロ氏によると、2019年に中国代表がFAO事務局長に就いたことは、ロビー活動を行っていた米国政府に大きな衝撃を与えたという。

プーリーWIPO副事務局長によると、中国は上海にWIPOの事務所を開設することを提案していた。そうすれば、極秘文書を含め年間25万件以上の特許出願の情報安全性が危機にさらされることになる。同氏によると、中国の知的財産保護能力に対する世界的な信頼は低すぎて、中国代表がWIPOを主導することはできないとみていた。

ホワイトハウスの高官はRFAに対し、中国政府がWIPOの支配権を入手しようとするのは、「その政治的および経済的利益に適合するように国際システムを再構築する」ためだと指摘した。

さらに、中国の代表者は中国共産党の枠組みから独立しておらず、「党の利益のために国連のアジェンダを作成しようとしている」とした。「中国は長い間、選挙のために贈賄したり、中国の都合を支持する国の債務を取り消したりするなどの便宜を図ってきた」

その最新の例は、FAO事務局長選出で見ることができる。ワシントン・ポストによると、中国は2019年、FAO事務局長候補から撤退するカメルーンに対して、同国の債務の帳消しを決定した。アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイに対しては、中国代表を支持しなければ、輸出を停止すると脅した。

同紙によると、中国は国連平和開発信託基金の唯一の寄付者であり、中国には5つの運営委員会の議席のうち4つもの席が与えられている。同基金の委員は、この基金をどの国連プロジェクトに提供するかを国連事務総長に助言する。委員は、中国共産党による広域経済圏構想・一帯一路とそれに関連した国際インフラ投資プログラムで、中国の都合にかなうようロビー活動を行っているという。

(翻訳編集・佐渡道世)

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