私と父(執筆者のScott Mann氏より提供)

勇敢な心

私たちは人生を生きていく中で、何が起こっても準備はできていると思いがちだ。しかし時に私たちは人生につまずき、何も準備ができていなかったと思い知らされる。

数週間前、父が脳卒中で倒れたと母からメールが届いた。最悪の結末が私の頭をよぎった。私の心は瞬時に変わり、闘うか、逃げるか、それとも動けなくなるかの選択肢しかない最悪の状態に陥った。

全てのことを最悪の方向へ考えていた私は、突然両親と自分の間の距離を感じていた。しかし母と電話で話した時、母の落ち着きに驚いた。父が脳卒中で倒れたその場にいたにも関わらず、母は冷静を保って問題を解決していた。母は救急車を呼び、すごく田舎にいたのに、父を病院に送ることができた。そして母は何が起こったのかを驚くほど明瞭に説明してくれた。

母の心、冷静さ、集中力とコントロールが父の命を救ったのだ。

最初の数日間は危ない状態が続いたが、その後容態は安定し、医師は父は一命を取り留めるだろうと話した。投与された薬は効いたが、左半身に重い後遺症が残り、歩行と左腕を使えるようになるための長いリハビリが待っていた。私たちは父をリハビリセンターに移し、疑問や不安でいっぱいの困難な回復のプロセスを歩み出した。

父はこの年で、リハビリを続けていけるだろうか。独立心の強い父が、なんでも助けが必要なこの状態を受け入れられるだろうか。歩行器を使うことに慣れるだろうか。このことが父の心にどんな影響を及ぼすのだろうか。

しかし次の朝、私たちの心配はすぐに消え去った。リハビリセンターに姿を表した父は、左腕に名前をつけて「フレッド」と呼んでいたのだ。父は「フレッドは今のところ全然、家族の一員のように振る舞っていないよ。彼は変わり者だ」といったように話した。重苦しい雰囲気の中で、父は私たちみんなを笑わせた。

それからしばらくして、父は左足を「ポンチョ」と名付けた。ポンチョも特別な性格で、残りの体に参加していなかった。父はリハビリセンターのスタッフたちの人気者になった。父が現れるたびに、スタッフたちは「ポンチョとフレッドはどうしていますか」と聞き、そして笑いながら素晴らしい会話が続いた。その笑い、そしてそれがもたらした心の状態のおかげで、私たちは冷静にユーモアを交えてこれからのリハビリの話をすることができた。

これが勇気だ。

51歳の私は、勇気については全て知っていると思っていた。自分自身の勇気を通して知ったのではなく、共に戦った戦友や、彼らの戦場での行動を通して知った。しかしこの数週間で私は勇気の違った一面を垣間見た。自信を持って状況を判断し、愛する人の命を救った母の静かなる勇気。自分の腕と足に名前をつけることを思いついた父の勇気。一番辛いのは父だったのに、父は私たちを笑わせてくれた。

勇気は私たちみんなの心の中にある。消防隊員やNavy SEALs(米海軍特殊部隊)だけのものではない。勇気は恐怖がない状態ではなく、私たちが仕え、導く人たちへの愛から培われるものだ。勇敢な心は穏やかな平和の中で育まれ、嵐が来たら私たちを導いてくれるだろう。ポンチョとフレッドがそうしているように。

執筆者:スコット・マン(Scott Mann)氏は元Green Beret(米陸軍特殊部隊)の隊員で、特殊でハイインパクトな軍事行動と人間関係の構築を専門としている。彼はRooftop Leadershipの創設者で、テレビやラジオ番組に多く出演している。

(大紀元日本ウェブ編集部)

 

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