中国検索大手・百度(バイドゥ)の記者会見に臨むジャーナリストと、会場内の警備員。参考写真(GettyImages)

国境なき記者団、20組織を「デジタル情報捕食者」と名指し 中国のネット規制機関など

国際NGO・国境なき記者団RSF、仏パリ拠点)は3月12日、世界のネット検閲反対デーを前に、報告書を発表し、ネット上の情報の自由を侵害したとする20の企業や政府組織を「デジタル情報の捕食者」と例えて批判した。

報告によると、20組織は中国やロシア、イラン、ベネズエラなどのネット情報管理組織やサイバー部隊、またドイツや米国拠点のサイバー犯罪組織などを挙げた。これらは、人工知能を使った情報発信者の監視や嫌がらせ、組織的なニセ情報の流布で情勢不安を煽るなどして「世界人権宣言第19条で保障されている意見と表現の自由に対する明らかな侵害」と指摘した。

RSFは中国に関する項目で、中共ウイルス(新型コロナウイルスとも呼ぶ)が発生して以降、中国共産党はインターネットの情報の拡散を統制したと指摘した。感染情報や証言を伝えるメディア・財経に対する情報発信規制や、インフルエンサー(ソーシャルサイトなどで影響を与える人)のアカウントも停止した。

さらに、オンラインの情報を取り締まる中国インターネット情報弁公室は、検索大手の百度、微信(WeChat)、微博(Weibo)、斗音(TikTokティックトック)などのSNSで検閲と監視を行い、コンテンツやアプリをブロックしたり削除したりしているという。

中国ネット管理当局は3月1日に「インターネット情報内容生態管理規定」を施行した。オンラインのコンテンツ制作者に対し、国の名誉や利益を損なう情報の制作・発信を禁止した。「自然災害、重大事故などの災害を不当に評価する」内容は、「悪質な情報発信」として発信者を処罰する。また、「習近平新時代中国特色社会主義思想」をうながすコンテンツを積極的に制作・発信したり、「健やかな」ネット文化の構築をオンラインプラットフォームの管理者に要求している。

カナダのトロント大学傘下のメディア研究機関シチズン・ラボ(Citizen Lab)は最近、中国の主要なソーシャルメディアは、中共ウイルスによる肺炎が流行の初期に、禁止用語を登録して検閲強化していたと指摘した。

報告によると、中国のYYライブストリーミングプラットフォーム(YY直播平台)は、早くも2019年12月31日に45のキーワードに対して遮断を開始した。その内容は「武漢肺炎」「武漢海鮮市場」「ウイルス感染」など。微信は翌年1月1日から、中国政府を批判する情報、疫病発生の予測と現状に関する情報、および中国政府に関連するキーワードを多数遮断した。

中国問題分析家で米作家の章家敦(Gordon Chang)氏は、中国のオンラインには民衆の「激しい怒り」が渦巻いており、中国政府はソーシャルメディアの反応に対応せざるを得なくなったと指摘した。中国のネットユーザーは事実上、根本的な政治変革を求めているという。

章氏は米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、「明らかに中国共産党政権の存亡に関わる問題だ。共産党はユーザーの投稿を削除し、反論を続けている。しかし、(民衆の怒りを)抑え込みきれなくなるだろう」

中国では感染が増加していた時期、習近平氏が1週間以上、公式の場に姿を見せなかったため、インターネットではさまざまな憶測が飛び交った。この情報の広まりを懸念してか、2月15日、中国共産党の機関誌「求是」が習近平氏の2月3日の中央政治局常務委員会での防疫についての演説を発表した。それによると、習近平氏は少なくとも1月7日に防疫について指示を出しているという。このことを官製メディアは当時、報道しなかった。

この例から、章氏は共産党が隠蔽を何よりも大事に思っており、共産党の本質は変わっていないと述べ、「中国のソーシャルメディアは、党の対応にある程度の影響を与えている」と分析した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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