焦点:日本の新型コロナ経済対策、真水15兆円規模検討 赤字国債発行へ

竹本能文、中川泉

[東京 23日 ロイター] – 新型コロナウイルスへの対応として政府が検討している追加経済対策は事業規模で30兆円超、真水となる財政支出で15兆円以上が想定されている。27日に予定されている2020年度予算の成立後、本格的な議論が始まる見通し。複数の政府・与党関係者が明らかにした。財源としては赤字国債を発行する方向との認識がコンセンサスとなりつつある。

関係者によると、現在政府内で検討されている対策は2段構え。感染拡大がどの程度の期間で終息するのか現時点では不透明なため、まず4月ごろに打ち出すのは、学校休校・イベント自粛など感染拡大防止措置に伴う支援対策が中心となる。その後、経済活動の再開を念頭に置いた、消費喚起などを想定している。その後も、必要と判断されれば、追加の対策を講じていく構えだ。

対策の規模感について、自民党の岸田文雄政調会長は22日のNHK番組で56.8兆円の事業規模の対策を打った「リーマンショック時を上回る規模が必要」と述べている。すでに政府は昨年12月に26兆円規模の経済対策を講じているが、政策担当官庁では「その際にはコロナウイルス関連の対策は含んでいなかった」との認識がある。

コロナウイルスへの緊急対応策としては、すでに第1弾で153億円、第2弾で4308億円の財政措置と1.6兆円規模の金融措置を講じた。

ただ、景気に与えるインパクトに対する「成長軌道に戻るための思い切った措置」(安倍首相)はまだ講じられていない。自民党内からは「今の段階では事業規模最低限30兆円、財政支出15兆円は必要だ」との声が複数ある。感染拡大の終息が見えない中、不足すれば「追加で3度、4度でも講ずる」との構えだ。

また、東京五輪の予定通りの開催が危ぶまれる事態となっていることから、政府内でも「五輪延期や中止の際の影響も念頭においた経済対策を水面下では検討する」との声がある。

第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストの試算では、コロナウイルス感染自体による経済下押し圧力が3.8兆円、五輪が中止になった場合のインパクトが2.1兆円。合わせると、およそ6兆円程度の下押し圧力となる。

具体的な内容としては、法人税の納税延期、現金給付、観光・旅行事業者支援などが議論されている。現金給付については、当初学校休校で支出が増えたこどものいる家庭向けを検討していたが、政治サイドからは、スピード感をもって対応するには世帯を限定せずに実施すべきとの意見もある。金額は1人あたり2万円以上との声が出ている。

与野党から要望が出ている消費税率の引き下げについては、教育無償化の財源を伴っており、社会保障財源確保の点でも難しい対応を迫られる。引き下げ前に消費が落ちることも予想され、即効性の点で懐疑的な声もあることから、現時点では消極的な声が多い。

対策の財源に関しては麻生太郎財務相も20年度の補正予算を講ずる可能性に言及しているが、大規模な財政支出への対応は「赤字国債しかない」(経済官庁幹部)との認識が政府内でコンセンサスになりつつある。大盤振る舞いする状況であれば、税収増は期待できず、しかも減税方向となる対策が示されているためで、財務省内にも赤字国債発行は必至との見方がある。

麻生財務相は経済対策の規模や財政支出の額について「赤字公債が増えることにもなりかねないので、慎重に対応しなければならない」との考えを示している。

財務省では赤字国債発行について「現時点では決まっているものはない」とコメントしている。

 

(取材協力 梶本哲史 編集:石田仁志)

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