(Pixabay)

12年間、謎の昏睡状態に陥ったゴーストボーイとは?

マーティン・ピストリウスくんはちょうど12歳になった頃、謎の病気に悩まされた。

ある日、いつも通り学校から帰ってくるとマーティン君は喉の痛みを訴えた。数日後には食事もとれないほど弱り切り、次第に話すことも困難になってしまった。

その後、すぐに病院に搬送され、医師による治療などが施されたが、結局のところ病状はわからないまま。マーティン君が最後に放った言葉は、『When home?』(いつ家に帰る?)だったそうだ。

それから12年。彼は閉じ込め症候群という脳の病気を患っており、体を動かすことはできなかった。

「長い間、ぼくはゴーストのようだったよ。そこで起きていることは聞こえるし、見えるんだけど、僕は存在していないかのようだった」とマーティンさんは当時をこう振り返る。

彼の1日はこう始まる。父が毎日5時に起きてきて、彼の着替えを手伝い、車に乗せ、ケアセンターまで送迎する。さらに8時間後には迎えに行き、お風呂に入れ、食事を与え、それからベッドに寝かしつける。寝かしつけたあとでも、床ずれを起こさないように2時間ごとに起きて、寝る向きを変える。

そんな辛い介護の日々が続き、ある日、母ジョアンさんはマーティンさんが聞こえていないだろうと思い、「死んでくれた方がましだわ」と本人に向かって言ってしまったことがあるという。このことについてマーティンさんは「みんなは僕が存在しないことに慣れていたと思う。それから思ったんだ、死ぬまでこうなんだろうかって。だけど、諦めなかった。父が懸命に僕の世話をしてくれた。でっかいヒゲを生やしサンタみたいな父が、優しい手で僕のそばにいてくれたんだ」とコメント。

誰が彼の回復を信じただろうか。マーティンさんは父親の支えにより、車椅子に乗れるようになったり、コンピューターを使って誰かと会話をすることもできるようになったという。さらに、この経験を本にまとめた「Ghost Boy」(ゴースト・ボーイ)も2013年に出版。その後は結婚し、現在は妻ジョアンナさんとイギリスに住んでいる。

「優しさ、尊厳、思いやり、尊敬の心を持って人と接してください。そして自分の持つ、心の力、愛情の大切さを感じること。そして決して夢を見るのをやめないで」と彼は言う。

マーティンさんは、この世に不可能は存在しないことを証明してくれた。彼からのエールはきっとたくさんの人の励みになることだろう。

(大紀元日本ウェブ編集部)

関連記事
曹植が兄・曹丕の試練に詩で答える物語。家族間の争いと深い悲しみを豆と豆殻で表現した心に響く詩。兄弟の絆と知恵に思いを馳せる一篇です。
チューインガム1枚で数百〜数千のマイクロプラスチックが唾液中に放出される──UCLAなどの最新研究が示した、意外な“日常的曝露”の実態とは。
人に悪く言われても、怒らず、謙虚に接した翟方進。 相手の敵意を消し、関係を円満にしたこの逸話は、『漢書』に記された2000年前の人間関係の知恵です。 一歩引く勇気が、道を開きます。
東京の春を切り取った18枚の静止画を通して、春の希望と喜び、そして前向きに生きる活力を感じて頂けたら幸いです。
ローゼルは抗酸化成分が豊富で、血圧・血糖・脂質を下げ、がんやアルツハイマーの予防にも効果が期待されます。美容やダイエットにも有効で、薬食同源の代表食材として注目されています。