マーティン・ピストリウスくんはちょうど12歳になった頃、謎の病気に悩まされた。
ある日、いつも通り学校から帰ってくるとマーティン君は喉の痛みを訴えた。数日後には食事もとれないほど弱り切り、次第に話すことも困難になってしまった。
その後、すぐに病院に搬送され、医師による治療などが施されたが、結局のところ病状はわからないまま。マーティン君が最後に放った言葉は、『When home?』(いつ家に帰る?)だったそうだ。
それから12年。彼は閉じ込め症候群という脳の病気を患っており、体を動かすことはできなかった。
「長い間、ぼくはゴーストのようだったよ。そこで起きていることは聞こえるし、見えるんだけど、僕は存在していないかのようだった」とマーティンさんは当時をこう振り返る。
彼の1日はこう始まる。父が毎日5時に起きてきて、彼の着替えを手伝い、車に乗せ、ケアセンターまで送迎する。さらに8時間後には迎えに行き、お風呂に入れ、食事を与え、それからベッドに寝かしつける。寝かしつけたあとでも、床ずれを起こさないように2時間ごとに起きて、寝る向きを変える。
そんな辛い介護の日々が続き、ある日、母ジョアンさんはマーティンさんが聞こえていないだろうと思い、「死んでくれた方がましだわ」と本人に向かって言ってしまったことがあるという。このことについてマーティンさんは「みんなは僕が存在しないことに慣れていたと思う。それから思ったんだ、死ぬまでこうなんだろうかって。だけど、諦めなかった。父が懸命に僕の世話をしてくれた。でっかいヒゲを生やしサンタみたいな父が、優しい手で僕のそばにいてくれたんだ」とコメント。
誰が彼の回復を信じただろうか。マーティンさんは父親の支えにより、車椅子に乗れるようになったり、コンピューターを使って誰かと会話をすることもできるようになったという。さらに、この経験を本にまとめた「Ghost Boy」(ゴースト・ボーイ)も2013年に出版。その後は結婚し、現在は妻ジョアンナさんとイギリスに住んでいる。
The Ghost Boy: The uplifting story ofhow Martin Pistorius survived a mystery paralysis http://t.co/yxexyPr4dt @Femail pic.twitter.com/ZUfvSxPTGq
— Marcel Rivera Paniza (@UtopiasArchitct) January 10, 2015
「優しさ、尊厳、思いやり、尊敬の心を持って人と接してください。そして自分の持つ、心の力、愛情の大切さを感じること。そして決して夢を見るのをやめないで」と彼は言う。
マーティンさんは、この世に不可能は存在しないことを証明してくれた。彼からのエールはきっとたくさんの人の励みになることだろう。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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