杏林漫歩

中国では、「杏林」は医学界に古くからある専門用語です。医学の専門家は、しばしば自身を「杏林中人」と称します。

 「杏林」は三国時代に神医であった菫奉に由来します。菫奉は字を君異といい、福建地方に生まれました。菫奉は、同時代の他の二人の有名な医師、張仲景と華佗とともに「三神医」と称されました。菫奉はルー山で診療を行って、賞賛され、その医術が伝説になりました。菫奉の診療について、その一端が[神仙伝]の十二巻に記録されています。

 菫奉は山に住んでいて、田畑を耕しませんでした。日中、彼は患者を診ましたが、医療費を全然請求しませんでした。けれども、重病患者を治療した時は、彼は患者たちに、杏の木を5本植えるように頼むのでした。彼が一般的な診療をした時には、杏の木を1本植えるよう頼みました。

 診てもらいたい多くの患者が来て、彼は忙しい毎日を送っていました。

 数年の後に、それらの杏の木々は森林になり、多くの鳥と動物たちが棲むようになりました。

 杏が熟した時に、彼は倉庫を建て、森林の中に告知板を置きました。それには、次のように書いてありました。

 「杏が欲しい方は、私にことわる必要はありません。その代わり、杏の重さと同じ重さの米を置いていって下さい」.

 食い意地の張った欲張りの人は、告知板を見たあと、杏と同じ重さの米を置かず、多くの杏を取りました。しかし、そうした時はいつも、森の奥から虎がでてきて、それらの食い意地の張った人々を追い立て、吠えるのでした。彼らは脅えて、急いで取ったいくつかの杏を道端に捨てていきました。

 意外なことに、彼らが家に着いて、手元に残っている杏を測ったところ、寄付した米とぴったり同じ重さであることに気付きました。米を出さずに杏を盗んだ時には、虎は彼らの家にまで追いかけてきました。人は脅えて盗んだ杏を返し反省しました。すると、虎は彼らを許すのでした。

 杏と交換された米は、経済的に困っている患者を助けるために使われ、菫奉の杏の林はたくさんの命を救いました。

 “杏林漫歩”とは、漢方医学と高邁な中医の伝説について追想することです。その目的は、人体、生命、および宇宙の真実について、その読者と共に探究することにあります。

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