一刀彫り(写真・大紀元)
【ショート・エッセイ】

木を彫る

夏目漱石『夢十夜』の第六夜を、ふと思い出した。

 鎌倉時代の仏師・運慶が、護国寺の山門で仁王像を彫っている。ところが語り手の「自分」も含めて、大勢の見物人はなぜか明治の人間ばかりなのである。語り手には「古くさい」と見える当時の装束に身を固め、一心不乱に木を彫り続ける運慶。すると語り手の傍で眺めていた若い男が、運慶の見事な所作を賛美し、「木の中に埋まっている仁王を鑿(のみ)と槌(つち)の力で掘り出すのだから迷いもなく正確なのだ」と解説した。

 それを聞いた「自分」も仁王が彫ってみたくなり、家に帰って片端から木を彫った。しかし仁王は出て来ない。「ついに明治の木にはとうてい仁王は埋まっていないものだと悟った」と、その最後部で漱石は「自分」に完敗を認めさせている。

▶ 続きを読む
関連記事
ドアノブやスマートフォン、リモコンなど、毎日何気なく触れる物ほど汚れがたまりやすいかもしれません。微生物の専門家が、見落とされがちな日用品と、清潔に保つための正しい掃除方法を紹介します。
十分に眠っているのに疲れが取れない、頭がぼんやりして集中できない。その背景には、エネルギーづくりを支えるミネラルの不足や、吸収の低下が関わっている場合があります。現代の食生活や土壌環境、ストレス、腸の状態から、ミネラル不足を考えます。
膵臓がんは初期症状が目立ちにくく、発見が遅れやすいがんの一つです。原因不明の体重減少、新たな糖尿病、便の変化、背中の痛みなど、注意したい7つのサインを紹介します。
OzempicなどGLP-1系薬を長期服用すると、加齢黄斑変性のリスクが最大4倍になる可能性が、110万人超を対象とした大規模研究で判明。専門家の見解と注意点を解説します
朝のこわばりは、年齢とともに感じやすくなる体のサインです。背中や股関節、太もも、ふくらはぎをゆっくり伸ばし、一日を動きやすく始めるストレッチを紹介します。