アングル:人手不足にコロナが追い打ち、疲弊する日本の介護現場

Elaine Lies

[東京 16日 ロイター] – 新型コロナウイルスの感染拡大で崩壊の危機に瀕しているのは、患者の救命に追われる医療現場だけではない。高齢化が進む日本では、介護現場も人材がひっ迫して飽和状態に陥ろうとしている。

ロイターはこのほど、日本の介護施設関係者10人以上に話を聞いた。そこから浮かび上がってきたのは、子どもの休校で出勤できない職員が増えたり、予定していた外国人スタッフの来日が中止になるなどし、入居者に十分なケアを提供できなくなりつつある現場の苦悩だった。

27歳の女性職員が働く東京のある特別養護老人ホームでは、おむつが汚れていてもこれまでより長く放置されるケースが増えている。

「全てに時間がかかってしまうんですよね」と、彼女は言う。「たとえば食事にいつもより時間がかかることで、トイレの世話が遅れてしまう」

週10時間までなら残業を申請できるが、それではとても足りない状況が続いている。ある入居者が別の入居者の食べ物に手を出すこともある。それに「ぎりぎり気づいた」ことが何度もあったと、女性職員は打ち明ける。

<自身が感染するリスク>

65歳以上が人口の約28%を占める日本では、もともと介護従事者の不足は深刻な問題だった。

日本で介護を必要とする人の数は670万人。そのうち約100万人が施設に入っている。米国はそれ以上の120万人が入所しているが、総人口は日本の2倍だ。米国は日本ほど高齢化が進んでおらず、65歳以上が人口に占める割合は16%と、30%近い日本のほぼ半分にすぎない。

日本における介護職の有効求人倍率は今年1月時点で3.95倍と、全職種平均の1.49倍を大きく上回る。介護施設では入居者3人に対し1人の職員を付けることが法律で義務付けられているが、厚生労働省は2月、新型コロナの影響で職員の不足が見込まれることから、「一時的に人員基準を満たすことができなくなる場合、柔軟な取扱いが可能」との通達を出した。

医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長・診療部長は「介護の現場は、何とか持っているというのが現実。職員1人が休んだらもう入所者全員に手が回らなくなる」と話す。「高齢者はデリケートなので、どんな環境の変化にも影響を受けてしまう」。

現在、高齢者介護施設の多くは、新型コロナ感染防止のため、グループで行うゲームや体操を中止している。3月初めごろからは家族との面会も禁止しており、入居者に精神的、身体的に多大な苦痛を強いている。

佐々木理事長によると、ある男性は家族を探して施設の中を歩き回っていた。また、前出の女性職員によると、ある入居女性は家族が面会に来ないために娘が死んだと思い込み、葬式の準備を始めようとしたという。

東京に住む金子誠一さんが、施設に入る96歳の父親と最後に会ったのは3月の初め。週3─4日は基本的に部屋で1人きりで過ごしているそうで、金子さんは父親の認知症が進むことを懸念している。施設は入居者が家族と電話で話せるよう努力しているものの、それは職員の仕事がまた1つ増えることを意味する。

施設の職員には自身が感染するリスクもつきまとう。NHKによると、日本では5月10日までに624人の新型コロナウイルスによる死亡が報告されているが、その約60%が介護施設で確認されたものだった。

職員は、もし家族の誰かが高熱を出せば2週間自宅で待機しなければならない。勤務中はマスクの着用が義務付けられており、マスクを怖がる入所者もいるという。厚労省によると、介護施設の職員全てにコロナウイルス感染の有無を調べる検査を行う計画はない。

淑徳大学社会福祉学科の結城康博教授は「このまま6月、7月、8月になれば、職員の数は減り続け、介護サービスを提供できなくなる」と懸念する。「そうなれば、介護の崩壊となりかねない」。

<1万人の外国人材>

新型コロナ危機の特徴の1つは、人びとの移動が制限されたこと。外国人材に依存してきた介護現場はその影響をもろに受けている。日本では現在、約1万人の外国人が老人介護施設で働いている。

大阪の特別養護老人ホームに勤務する34歳のフィリピン国籍の女性は、日本で働きたい人材を3000人ほど集め、随時、募集のためフィリピンへ行く。4月に新たな人材が来日する予定だったが、新型コロナの影響で取りやめになったという。

「(コロナのせいで)もちろん来られない」と話す彼女が働く施設では、80人程度のスタッフのうち13人が外国人だという。「仕事はとてもきつい」と彼女は語る。

東京に住む清水富生子さんの両親は、神奈川県川崎市の介護付き有料老人ホームで暮らしている。清水さんも例外なく、80代の両親と会えない日々が続いている。

「両親にとって家族と話すのが一番元気が出ることだと思うので、そうしてあげたい。会えないのはとても寂しい」と、清水さんは話す。

母親の久子さんは、筋肉が衰えないようにと毎日施設の中を散歩している。「また元の日常に戻ってほしいけど、それまでには長い時間がかかると思う」と、久子さんは電話で語った。「それを考えると、何となく少し憂鬱な気がします」

(日本語記事作成:宮崎亜巳、久保信博※)

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