【紀元曙光】2020年5月25日

映画『慕情』(1955)。オールドファンに説明は不要であろう。

▼舞台は1949年ごろの香港。女医のハンは、国民党軍の将校だった夫を、国共内戦で亡くしている。共産党政権の大陸へ戻るか、迷うハン。米国人記者のマークは、シンガポールにいる妻とは不仲で、離婚を望んでいる。パーティで出会ったハンとマークは、互いに心を寄せ合っていく。

▼50年に朝鮮戦争が始まると、マークは特派員として戦場へ赴任するが、投下された爆弾で死んでしまう。かつて二人で登った美しい丘で、愛する人の面影を探すハン。映画史にのこる珠玉のラストシーンである。とにかく音楽と風景がすばらしい。

▼もちろん香港には、昔から裏社会が牛耳る暗黒街がある。本来はマフィア映画のほうがふさわしいのだが、この美しすぎる愛の映画のおかげで、ずいぶん良いイメージを保ってきた。観光客が映画のロケ地を訪ねる、いわゆる聖地巡りは、最近のアニメ映画からではなく、この『慕情』や『ローマの休日』が始まりだろう。

▼さて、現代の香港。マフィアは警察。その親玉は北京にいる。これが、どうしようもなく悪辣でひどい。全国人民代表大会(全人代)は、香港の自由と民主を完全につぶすため、「国家安全法」という大悪法の香港適用を通そうとしている。

▼24日、デモで抵抗する香港の市民や学生。彼らを狂ったように殴りつける警察。小欄の筆者から、日本国民にお願いしたい。今の香港の光景を他人事と思ってはいけない。彼らは、香港のみならず、日本をふくむ世界のために、命を懸けて中共と闘っているのだ。

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